養育費

養 育 費

養育費とは、「子どもを育てるのに必要な費用」です。一般的には、未成熟子が自立するまでに必要な費用だとされ、衣食住に必要な経費・教育費・医療費・最低限度の文化費・娯楽費・交通費など、たくさんの内容が含まれます。  

子どもの権利・親の義務

 養育費の支払いは親としての義務ですから、離婚の形態に関わらず、養育費については必ず取り決められるべきものです。養育費は父母の経済力に応じて分担しなければなりません。親権がどちらにあっても関係ありません。一緒に生活していないほうの親も、当然支払います。

妻が離婚したい一心で「離婚さえしてくれれば、今後一切、養育費の請求はしません」と、夫に約束してしまうことがあります。けれども、子どもが親から扶養を受ける権利は放棄できないとされています。父母の約束は2人の間では効力があるものの、子どもは父母間の約束に縛られるわけではないのです。 

2人で話し合って決める

養育費については、支払いの期間・支払い金額・支払い方法について具体的に取り決めましょう。金額は、現在子どもを育てるのにかかっている費用、今後成長に伴ってかかるであろう費用、それぞれの財産、今後の経済状態などを検討して決めます。

※ (協議離婚であれば、取り決めた内容を「離婚協議書」などの合意文書として書面で残し、合意内容を強制執行認諾約款付きの「公正証書」にしておきましょう。)

決まらない場合は裁判所で

 話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所の調停を利用できます。離婚前であれば、離婚調停や婚姻費用分担を求める調停の中で話し合います。離婚後であれば、「養育費請求」の調停で話し合います。調停で合意できず不成立となった場合には、家庭裁判所が審判によって決定します。裁判離婚の場合は、離婚と同時に養育費も請求すれば、判決で決定されます。  

養育費請求の申し立て 

申立先  家庭裁判所(相手方の住所地、または相手方と合意した所)
費用  対象の子ども1人につき1200円(収入印紙) + 郵便切手(80円×10枚)
必要な物 ▪「家事調停申立書(養育費)(所定の用紙)

▪自分、相手、子どもの戸籍謄本 各1通

※切手の額や必要な物は、裁判所によって異なる場合があるので、問い合わせてください。

 金額の相場・・・ それぞれの親の資力、生活水準によって決まってくるものなので、一般論では言えません。養育費早見表参考にするといいでしょう。

 養育費早見表

養育費を支払う親の年収」を縦軸、「子どもを育てる親の年収」を横軸としたマトリクス表。年収と子の人数によって標準額がかわるようになっている。東京と大阪の裁判官らをメンバーとする「東京・大阪養育費等研究会」が2003年4月に発表した(判例タイムズ1111号「簡易迅速な養育費等の算定を目指して──養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」巻末綴じ込み小冊子)

支払い方

 支払う期間は、養育費の申し立てがあった時から、子どもが社会人として自立するまでが一般的とされています。これは必ずしも未成年の間を意味するものんではなく、「高校卒業まで」「18歳になるまで」「成年に達するまで」「大学卒業まで」など、親の財力や学歴などの家庭環境によって判断されます。

 支払い方法は、金融機関の子ども名義の口座に毎月振り込んでもらうのがお勧めです。ただし、支払う側が特に希望した場合や、支払ってもらう側が相手の支払い能力や約束の履行意思を危惧する場合には、額が低くても一時金で受け取るほうが無難なこともあります。

 養育費を一方の親だけが負担していた期間があれば、もう一方の親に請求することができます。長期の別居の後で離婚する場合、離婚後の養育費だけでなくて、別居期間中の養育費も請求できます。もし離婚の際に養育費の請求をしないと約束した場合には、過去の養育費の分担を請求することは難しくなります。なお、支払い期間内においては、養育費の免除ないし減額・増額を双方が求めることができます。

  

Q  養育費に税金はかかる?

 A  養育費として取得したお金については、教育に通常認められる範囲については非課税とされています。

  • 養育費が毎月親の口座に振り込まれる場合は「収入」とみなされ、公的援助が制限されることがあります。

養育費の変更

 養育状況の変更や、収入の変化に合わせて、養育費の免除または減額・増額を求めることができます。話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に養育費増額請求の調停、養育費減額請求の調停の申し立てをします。増額・減額を申し立てる際には、正当な理由が求められます。  

養育費の増減で考慮される事情

 増額の事情

  • 子どもの入学、進学に伴う費用
  • 子どもの病気、ケガによる治療費
  • 受け取る側の親の病気、ケガ
  • 受け取る側の親の転職や失業による収入の低下
  • 物価水準の大幅な上昇

 減額の事情

  • 支払う側の病気
  • 支払う側の転職、失業による収入の低下
  • 受け取る側の親の収入増
  • 養育費の請求をしないと約束した場合
  • 子どもの成長に伴って、事情も当然変わります。

    後で養育費の金額変更で揉めないためには、予め離婚協議書に「子どもの進学、病気などの際には養育費の増額請求ができる」などの項目を盛り込んでおくほうがいいでしょう。ただし、契約書に上記項目を記入しても強制力はありません。あくまで確認事項にとどまり、養育費の増減については夫婦で協議する必要があります。

    再婚と養育費

     元夫が養育費を支払っていて、子どもを引き取った元妻が再婚したとします。元の妻が再婚しただけでは、養育費の支払いを中止する理由にはなりません。子どもの生活保持義務を負うのは再婚相手ではありません。しかし、子どもと再婚相手が養子縁組をする場合には、養親にも法的に子どもの生活費を負担する義務が生じるので、養育費の減額が認められる場合があります。