離婚と法律

法律

公法 国家と国民の間を規律する法 憲法・刑法・行政法・訴訟法・国際法
私法 個人と個人の間を規律する法 一般法 普遍的に大きい範囲の人物・事件・事柄に適用される法 民法
特別法 一般法よりも狭い範囲の人物・事件・事柄に適用される法 商法・国際私法
社会法 公法と私法それぞれの性格を有している法 労働法

 

民法とは・・・日常生活における個人と個人との間を規律する一般法

 

第5章       不法行為

(不法行為による損害賠償)

第七〇九条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

行為の正体
1▷法定代理人が未成年者を代表して行為する際に不法行為を行った場合には、被害者は未成年者に対しては損害賠償を請求しえない。(大判昭15.10.10新聞四六二七-一二)
2▷未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき本条に基づく不法行為が成立する。(最判昭49.3.22民集二八-二-三四七)

故意・過失一般
3▷本条では過失の有無を決定すべき注意の程度を明示していないが、その精神は、普通注意を用いる人が事物の状況に応じて通常なすべき注意を尽くせば足りるものと解すべきである。(大判明44.11.1民録一七-六一七)
4▷過失は、行為が違法の結果を生じうるべきことを認識しながらその結果は生ずることはないであろうとの希望をもって相当の注意を欠く場合のみに存するわけではなく、違法の結果が生じうるとの認識がなくとも相当の注意をすればこれを認識しかつ避けえた場合にも存する。(大判大2.4.26民録一九-二八一)

医療過誤と故意・過失
責任能力→七一二条

権利侵害一般
19▷本条の「権利」は、厳密な意味においての権利でなくても、われわれの法律観念上その侵害に対し不法行為に基づく救済を与えることが必要であると思惟される利益であれば足りる。-大学湯事件-(大判大14.11.28民集四-六七〇)
20▷第三者の権利の行使を妨げるために訴訟の原告が請求を放棄することおよびその放棄をそそのかしたり共謀したりすることは、不法行為である。(大判昭18.12.14民集二二-一二三九)
21▷乙が甲から不動産を買い受けて登記を経ないうち、丙が甲から右不動産を買い受けて登記をなし、これをさらに丁に売り渡して登記を経たため、乙がその所有権取得を丁に対抗することができなくなった場合において、丙が甲乙間の売買の事実を知って買い受けたものであっても、それだけでは、丙は乙に対し不法行為責任を負うものではない。 (最判昭30.5.31民集九-六-七七四)
24▷甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係をもった場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時すでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない。 (最判平8.3.26民集五〇-四-九九三)

債権侵害
27▷責務の目的が、第三者の故意過失に基づく行為によって滅失したために履行不能になり責務が消滅した場合には、第三者の行為は不法行為を構成する。(大判大11.8.7刑集一-四一〇)

違法性
30▷訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利または法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながらまたは通常人であれば容易にそのことを知りえたのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。(最判昭63.1.26民集四二-一-一)

行為と損害発生との因果関係
34▷因果関係の存否は、事物通常の状態により社会普通の観念に基づいて判断すべきものであって、抽象的に観察してその行為が一般的に同種の損害を生じうる可能性を必要とするが、その損害が行為の直接の結果であるかは問わない。(大判大9.4.12民録二六-五二七)
37▷訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を、是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いをさしはさまない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつそれで足りる(医療過誤の例)。(最判昭50.10.24民集二九-九-一四一七)
38▷妻および未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が、妻子のもとを去った右男性と同棲するに至った結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもって父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は、未成年の子が被った不利益との間に因果関係がないから、未成年の子に対して不法行為を構成するものではない。(最判昭54.3.30民集三三-二-三〇三)

損害賠償-一般的基準・財産権侵害による損害賠償
40▷不法行為に基づく損害賠償の範囲を定めるにも、四一六条を類推して因果律を定めるべきである。-富喜丸事件-(大連判大15.5.22民集五-三八六)
41▷①不法行為によって物を滅失毀損された者は、当時の交換価格の賠償を請求しうるが、そのほかに将来その物について通常の使用収益をなしうべき利益に対する賠償は受けえない。②不法行為によって滅失毀損した物が後に価格騰貴し被害者がこれによって得べかりし利益を失った賠償を求めるには、被害者において不法行為がなければ騰貴した価格で転売その他の方法によって利益を確実に取得したであろうという特別の事情があってその事情が不法行為当時予見しまたは予見しうべきだったことを必要とし、訴訟上これを主張立証しなければならない。-富喜丸事件-(大連判大15.5.22民集五-三八六)
42▷不法行為による物の滅失毀損に対する損害賠償の金額は、特段の事由のない限り滅失毀損当時の交換価値による。(最判昭32.1.31民集一一-一-一七〇)48▷不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害といえる。(最判昭44.2.27民集二三-二-四四一)
49▷現在

(財産分与)

 第七六八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りではない。
前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協議によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与させるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

1▷財産分与請求権は、必ずしも相手方に離婚につき有責不法の行為のあったことを要件とするものではなく、慰謝料請求権とは本質を異にし、権利者は両請求権のどちらかを選択して行使することもできる。(最判昭31.2.21民集一〇-二-一二四)
2▷財産分与がなされても、それが損害賠償を含めた趣旨と解せられないか、そうでないとしても、その額および方法において、請求者の精神的苦痛を慰謝するには足りないと認められるときは、別個に慰謝料を請求することができる。(最判昭46.7.23民集一〇-二-一二四)
3▷財産分与は、分与者がすでに責務超過の状態にあり当該分与により一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、特段の事情のない限り、債権者取消権の対象とならない。(最判昭58.12.19民集三七-一〇-一五三二)→四二四条13
4▷①離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、本条三項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産分与であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その程度において詐欺行為として取り消される。②離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害賠償責務の額を超えた金額を支払う旨の合意は、右損害賠償責務の額を超えた部分について、詐欺行為取消権行使の対象となる。(最判平12.3.9民集五四-三-一〇一三)→四二四条16
5▷不利益変更可。    (最判平2.7.20民集四四-五-九七五)→民訴三〇四条3
6▷錯誤。                   (最判平1.9.14判時一三三六-九三)→九五条14

第二款 裁判上の離婚

民法 第七七〇条 夫婦の一方は、次に揚げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
裁判所は、前項第一号から第四号までに揚げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

一項二号
1▷妻が婚姻関係の破綻について主たる責任を負い、夫からの扶助を受けないようになったのも自ら招いたものである場合においては、夫が妻と同居を拒みこれを扶助しないとしても、悪意の遺棄にあたらない。(最判昭39.9.17民集十八-七-一四六一)妻に婚姻関係の破綻の原因があり、責任を負って夫からの扶助を受けられない場合は、夫が同居を拒んで別居し、妻を扶助しなかったとしても、悪意の遺棄とはいえない。

一項四号
2▷①心神喪失の状況にあって、いまだ禁治産の宣告をうけない者に対し離婚訴訟を提起せんとする夫婦の一方は、まず他方に対する禁治産の宣告を申請し、その宣告を得て旧人事訴訟手続法四条により禁治産者の後見監督人または後見人を被告として訴えを起こすべきである。禁治産とは心身喪失の状況にある者を保護するため、法律上自分で財産を管理・処理できないものとして、後見人をつけること。また、その制度。本人・配偶者・四親等以内の親族・後見人・保佐人または検察官の請求により、家庭裁判所が宣告する。②夫婦の一方が不治の精神病にかかっている場合でも、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途にその方途の見込みのついた上でなければ、離婚の請求は許されない。       (最判昭33.7.25民衆一二-一二-一八二三)
3▷妻が精神病にかかり、回復の見込みがなく、また妻の実家が療養のための経済的能力があり、一方夫の生活が必ずしも裕福でない等の事由がある場合は、本条二項による離婚請求を棄却できないとされた事例。(最判昭45.11.24民集二四-一二-一九四三)

一項五号
4▷夫が妻をさしおいて他に情婦を持ち、それがもとで妻との婚姻関係継続が困難になった場合には、夫の側から本条一項五号によって離婚を請求することは許されない。(最判昭27.2.19民集六-二-一一〇)
5▷夫婦が相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、離婚により相手方がきわめて苛酷な状態におかれる等著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもってその請求が許されないとすることはできない。(最大判昭62.9.2民集四一-六-一四二三)

一項各号の相互関係
6▷本条一項四号の離婚原因を主張して離婚の訴えを提起したからといって、反対の事情のない限り五号の離婚原因も主張されているものと解することは許されない。(最判昭36.4.25民集一五-四-八九一)

(離婚又は認知の場合の親権者)

 第八一九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。