性格の不一致をめぐる攻防①
別れたい理由 | 別れない理由 | 攻防の要点と結果 | ||
① | 自分は快活なのに夫は無口、対話がなく、気持ちの通い合いがなく、顔を合わすのも嫌(妻が提訴) ──昭和51年婚姻、52年別居 | 温厚誠実、多弁ではないが特に無口ではない。一貫して婚姻生活の継続を希望(有責配偶者は妻との主張) | 性格の不一致と離婚原因──請求認容──妻の勝気でやや自己中心的とも見える行動が破綻の一因ともいえないではないが、双方の精神的不協和が重要な原因で、妻の絶望感、愛情喪失、双方の考え方の隔絶(性格の不適合)から関係修復の可能性なし(横浜地裁s59.7.30判時1141.114) | |
② | 生活観、人生観の甚だしい隔絶(夫が提訴、43歳、新聞記者) ──ちなみに、昭和33年婚姻、38年別居、39年調停申立、51年夫敗訴の控訴審 | 今でも愛している、仮に破綻したとしても夫に不貞あり(有責配偶者は夫との主張、妻主婦、45歳) | 性格の不一致と離婚原因──請求認容──夫は高い水準の知的生活を希望、妻はその度合い低い、結婚生活の挨拶回りに着ていくコートのことで口論、妻は失神し、以後約8回ヒステリー性発作あり、致死量に至らない多量の睡眠薬を飲む、その他生活観、人生観の隔絶から完全に破綻している(東京高裁s54.6.21判時937.39) | |
③ | 妻は協調性を欠く性格(夫が提訴) 夫が理由なく実家に追い出したので悪意の遺棄(妻が反訴) ──昭和47年婚姻、1年4ヶ月後の不和 | 嫁入り道具少ないなどの嫁いびり等と実家への追い出し(有責配偶者は夫との主張) | 責任は誰にあるか──夫にありとして夫の請求を棄却、妻の請求を認容 (名古屋地裁一宮支部s53.5.26判時937.64) | |
④ | 妻のヒステリー的性格、奇行(夫41歳が提訴、妻36歳) ──夫は大手建設会社幹部職員、妻は塾教師──昭和36年婚姻、49年別居 | 夫を愛している、予備的に夫に異性関係の噂がある(自分は悪くない、有責配偶者は夫との主張) | 破綻の程度と責任──双方自己の正当性を主張して意見の一致を見ない、回復しがたいまでに破綻(福岡地裁s53.8.10判時937.64) |
性格の不一致をめぐる攻防②
別れたい理由 | 別れない理由 | 攻防の要点と結果 | ||
⑤ | 夫は人一倍几帳面、清潔好き、妻は事務処理能力、整理能力を欠く(夫が提訴)──夫婦とも医師、同居期間3年、別居期間5年余 | 夫の主張は婚姻を継続しがたい重大な事由に当たらない等 | 性格の相違と婚姻を継続しがたい重大な事由──請求認容──口論の原因は些細なことだが、双方の妥協しがたい性格の相違から破綻を認定(東京地裁s59.10.17判時1154.107) | |
⑥ | 夫は細やか几帳面、妻は婚姻前に異性関係あり、嫉妬心強く傲慢、医業に非協力、育児能力・財産管理能力の欠如その他(医師の夫が提訴)──昭和38年婚姻、43年別居 | 4人の子あり、看護婦として精一杯努力している、子供と隔離され会わせないようにされている等 | 破綻の程度と責任──請求棄却──破綻に至っていない。一方的に妻に原因があるわけではない。性格は対照的だが、円満な婚姻生活が期待できないほど偏っていない(札幌地裁s50.3.27判時798.77) | |
⑦ | 妻はわがまま、勝手に実家に帰った(夫が提訴)──昭和43年婚姻、47年別居 | 夫の家が家風に厳しい、夫の両親の過干渉、実家に戻ったのは死産後の養生のため | 破綻の程度と責任──請求認容──妻に何不自由なく、夫の両親に感謝の念なく、夫を責めるのみで反省しようとしない(横浜地裁s50.9.11判時811.85) | |
⑧ | 夫は自己中心的で妻の心情に思いをはせない(妻が提訴) | 愛情を有し復帰を熱望、8歳の長男もためにも離婚反対 | 同上──棄却──回復しがたい程度まで破綻していない(東京高裁s52.10.27判時880.31) |