証拠 有責性の質と量

こんなものも証拠

証拠とは事実が残した痕跡です。デジカメで写した事実は、映像という形で痕跡が残ります。手紙を出せば、手紙という痕跡が残ります。彼、あるいは彼女から電話があり、急いでメモをとったとします。そのメモも証拠ですが、メモ帳の次の紙片に残された字の跡も証拠です。セックス後の始末紙や毛も証拠ですが、これが誰のものかとなると科学警察の力が必要となりますから、殺人事件にでも発展しない限り、通常、このようなものは証拠となり得ません。

①写真──腕を組んで歩いていた写真や車内で抱擁していた写真など。(暴行傷害の証拠として提出されることもあります)  夫婦親子が仲睦まじく生活していた写真(性格の不一致事件で被告側から、仲のよかった時代の証拠として)

②調査事務所の報告書──追跡し、2人がホテルへ入る所、出てくる写真を撮影し報告書を添付したもの

③日記・手帳類──相手方が異性関係を記した日記や手帳は、証拠として決定的な価値があります。相手方が告白したことを記した、ご自分の日記や手帳は、嘘が混じることがあり得ますから、証拠としての価値は少なくなります。

④手紙・メモ類──相手方の書いた手紙は証拠として価値があります。したがって、ここでも異性関係が記されていれば、決定的な証拠になります。しかし、第三者の手紙となると、その第三者が公平な立場の人でない限り、自分の書いたものと同様の価値しか認められないでしょう。

⑤メール──これは改ざんが簡単であるため、証拠としての価値は手紙やメモより劣りそうです。

⑥年賀状・暑中見舞い──これも内容が年賀と暑中見舞いですから、内容面から、証拠価値が少ないようです。しかし、筆跡が争われた場合は、本人の字であることを証明する手がかりになることがあります。

⑦診断書──暴行傷害の証明には欠かせません。証拠としての価値は大いにあります。

⑧陳述書──ご自分や親戚・友人などの証言は、あらかじめ「陳述書」という形で作成しなければなりません。のように、決定的証拠とはなり得ませんが、これらの陳述書なくして裁判はできません。

⑨戸籍謄本・住民票写し・不動産登記簿謄本・課税証明書等──これらは公文書ですから、証拠としての価値は大です。しかし、婚外子を作って認知したような特別の場合を除き、離婚原因を証明することにはなりません。

⑩録音テープ(データ)──「反訳」といって文字に直し、テープと反訳文をセットにして提出しなければなりません。暴言や屈辱的発言、脅迫などの肉声テープは証拠価値が大です。しかし、話し合いをテープにした場合は、自己に有利な部分だけを記録しておくという修正の可能性がありますから、証拠としての価値は必ずしも高いとはいえず、ケースバイケースです。

⑪スナックのマッチ箱──破綻の端緒の証拠として登場しそうですが、裁判で出されることは少なく、スナックが、夫の素行とどういう関係にあるのか、飲酒が問題なのか、スナックのママさんとの浮気が問題なのか、その辺の関連を突き止めねばなりません。

⑫女性あるいは男性の名刺──この名刺が妻あるいは夫の素行とどういう関係があるのか、と同様に異性としての交際の程度が問題となります。これも破綻の端緒として登場しそうです。

⑬不相当な贈り物──これも、誰が、いつ、なぜ贈ったのか事情が問題となりますから、プレゼントを見つけただけでは不十分です。

⑭ワイシャツにつけられた口紅──破綻の端緒として問題となります。しかし、電車の中でつけられたかもしれません。ワイシャツや背広の、どの場所の、どういう口紅か、よく観察しておかねばなりません。また、事情を聞きだしておく必要もありそうです。

⑮下着に附着した体液や毛──破綻の端緒として出てきそうです。発見したときに、よく観察して、質問しておく必要があるかもしれません。こういうときこそ、こっそりテープをとっておきたいものですが、冷静でいられますかどうか。

⑯パスカードに残された駅名──行動の記録がわかります。「今日は地方出張で泊まり」といいながら、パスカードの駅名が近郊の私鉄の駅だったり……

⑰携帯電話の記録──パートナーの交際範囲を知っておかねばなりません。その交際範囲と電話の記録が一致するかどうか。これも、日頃の観察が必要です。