長崎の離婚相談所https://shiki-office.com24時間365日、無料で電話相談OK(要予約)Tue, 23 Jan 2024 11:06:41 +0000jahourly1https://shiki-office.com/wp-content/uploads/2023/12/cropped-original-32x32.webp長崎の離婚相談所https://shiki-office.com3232 協議離婚で頼りになる専門家https://shiki-office.com/archives/11784Mon, 10 May 2021 20:41:44 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11784弁護士

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離婚問題の相談先https://shiki-office.com/archives/11782Mon, 10 May 2021 20:39:58 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11782民間の相談所

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弁護士

法律が絡む問題は、プロの弁護士が頼りになります。弁護士の情報は、相談所や弁護士会で入手できます。弁護士会でも、有料の法律相談をしています。

(財)法律扶助協会

東京に本部がある民間の公益法人で、各都道府県に支部があります。無料の法律相談の他、裁判費用を立て替えたり、弁護士を紹介したりしてくれます。各都道府県の弁護士会と同じ場所にあります。

精神科医・診療内科医

配偶者の暴力や暴言で傷ついた心や、疲弊してしまった精神を癒してほしい時に頼りになります。カウンセリングや薬による治療で、ボロボロになった心が立ち直っていきます。カウンセリングを通して、それまで気づかなかった、自分や配偶者の心の問題が明らかになることもあります。

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離婚 判例集https://shiki-office.com/archives/11778Mon, 10 May 2021 20:37:00 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11778 

離婚前の問題

  • 婚姻費用分担請求

第2節 慰謝料

1 財産分与と慰謝料
相手方の有責行為によりやむなく離婚に至った場合、その精神的苦痛について慰謝料の請求が認められる。(最判昭31.2.21民集102124頁)

  • 財産分与と慰謝料の関係

慰謝料と財産分与との関係について、最高裁は、財産分与は夫婦財産の清算と離婚後の扶養を目的とするから、「分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき有責の者であることを必要とはしないから・・・・慰謝料の請求権とはその性質を必ずしも同じくするものではない」としたうえで、財産分与後に、別途、慰謝料請求をすることを妨げないし、財産分与に損害賠償の要素を含めることもできるが、それを含めた趣旨と解せられないとき、または含めたとしてもその額および方法において精神的苦痛を慰謝するには足りないと認められるときには、財産分与を得ていても、別個に慰謝料を請求することができるとする。(最判昭46.7.23民集255805頁)

学説は、有責性を問題にするかどうかで清算・扶養と慰謝料の性質が違うことから、財産分与を清算・扶養に限定する立場(限定説)と、紛争の1回的解決をめざして3要素すべてを含むとする立場(包括説)に分かれ、論争があった。判例は限定説に立ちつつ包括説的扱いも認めるという、明快ではないけれども柔軟な解決をしてきた。例えば、

◇夫婦財産の清算と、夫の有責性を慰謝料的要素として考慮したうえで、不動産についての夫の共有持分を全部妻に分与した。(大阪家審昭62.7.17家月3911135頁)

◇妻が支払うべき慰謝料については、婚姻中に形成した5筆の不動産についての財産分与の裁判中で、夫の取得分に慰謝料の性質を有する分与分を加える方法により決するのが相当であるとした。(東京高判平8.12.25判夕965226頁)

  • 請求方法

慰謝料請求については、離婚訴訟と併合請求することもできるし(人訴171頁前段)、離婚訴訟の係属中に訴えを変更して、請求を追加することもできる。(同172項)

離婚成立後に慰謝料請求をする場合は、慰謝料請求の調停を申し立てることもできるし、いきなり地方裁判所に提訴することもできる。

離婚後、財産分与とともに調停申立てをする場合、2件の事件として立件し、調停が不調になった場合は、財産分与請求事件は審判に移行するが(家審261項)、慰謝料請求事件は訴訟事項であるので審判に移行しない。

慰謝料については、別途、地方裁判所への提訴が必要である。

財産分与審判事件で財産分与に慰謝料を含めて判断するためには、申立人に釈明し、慰謝料を含めて財産分与を請求するのかを手続上、明確にする必要がある。(大津214頁)

ただし、当事者が有責性を争っている場合には、訴訟手続による方が適切であり、財産分与審判中で慰謝料を含めて判断することが適切ではない場合もある。

 

2 離婚による慰謝料

  • 慰謝料の内容

離婚慰謝料には、離婚原因となった個別の有責行為、たとえば暴力・不貞・悪意の遺棄などから生じる精神的苦痛の慰謝料(離婚原因に基づく慰謝料)と、離婚そのものによる精神的苦痛の慰謝(離婚自体慰謝料)があるとされる。

判例は、この2つを必ずしも明確に区別せず、一括して処理している。(鈴木53頁)

離婚自体から生じる慰謝料は、離婚が成立した時点から発生するし、慰謝料の消滅時効について、損害は離婚が成立して初めて評価されるとして、離婚成立時から進行するとする判例(最判昭46.7.23民集255805頁)との整合性を考えると、遅延損害金の起算日についても、離婚成立時すなわち離婚裁判確定時とする解釈が成り立つ。(大津227頁)

一方、離婚原因慰謝料の遅延損害金の発生時は、訴状送達の日の翌日からとされるが(判例23 159頁等)、両者を明確に区別しない場合は、判決確定の日の翌日からということになる。

 

  • 慰謝料額の動向

どのような有責行為や損害がある場合に、どのくらいの金額の慰謝料が認められるか、客観的な基準を見出すのは難問である。

離婚に至る経過は千差万別である。

少し古いが、判例を網羅的に検討した研究によれば、慰謝料の相場のようなものがあるのも事実である。

1976(昭51)年から1978(昭53)年6月まで、東京・大阪・名古屋の3庁で認容された離婚による慰謝料の平均額は、東京200万円、大阪189万円、名古屋150万円であり、500万円で頭打ちの現象がみられた。(大津12頁、20頁)

1980(昭55)年から1989(平元)年までの東京地方裁判所の対席判決301件の慰謝料の平均額は190万円で、最も件数の多いのは、200万円を超え300万円まであるが、財産分与の認められていない事案で慰謝料が認められた117件の場合には、平均額は270万円に上がっている。(鈴木眞次「東京地裁離婚判決(昭和55年から平成元年まで)にみる離婚給付の額・方法と決定基準」判夕78878頁)

通常の例での最高額が500万円であるのは同様であり(32件)、それ以上の額が認定された特殊例は8件にすぎなかった。

こうしてみると、裁判所は離婚慰謝料の増額に慎重であることがわかる。

その後、こうしたまとまった研究はないが、離婚慰謝料の相場に大きな変化はみられないようである。

判例は、慰謝料の額について、双方の有責性の程度、婚姻期間、当事者の年齢、未成年子の有無、経済状態、財産分与による経済的充足があるか、離婚に至る一切の経過等を考慮して判断しており、どの要素でどのくらいの額を認めるのかという客観的な基準はない。

しかし、おおまかな傾向として、次のようなことがいえる。

  • 有責性が高いほど高い。
  • 精神的苦痛や肉体的苦痛が激しいほど高い。
  • 婚姻期間が長く、年齢が高いほど高い。
  • 未成年子がいる方が、いない場合よりも高い。
  • 有責配偶者に資力があり社会的地位が高いほど高い。
  • 無責の配偶者の資力がないほど高い。
  • 財産分与による経済的充足がある場合に低い。
  • の有責性については、有責性の小さい方から大きい方への慰謝料請求も認められる。例えば、

◇双方に有責性があるが、妻が夫の職場に対して非難の電話、訪問等をした行為が異様の感を与えるほど執拗、激越であり、妻の責任が若干重いとして、妻に慰謝料100万円の支払いを命じた。(東京高判昭58.9.8判時1095106頁等)

 

請求する側が婚姻の継続の努力を怠った場合には慰謝料は減額される。例えば、

◇別居が34年、別の女性との同居が23年に及ぶ有責配偶者からの離婚請求の事案で、夫の悪意の遺棄、不貞行為などについて、妻が「夫の行動を防止ないし解消するための積極的な措置を殆んど取らなかったこと」が考慮され、夫について慰謝料を300万円とした。(ただし、夫が妻に贈与した土地が7300万円に値上がりしていることもこうりょされている。浦和地判昭60.11.29判夕61596頁)

◇妻が夫の不貞を疑い、夫はこれに腹を立てて暴力をふるったため、婚姻後4ヶ月で別居し10年経過した案で、「困難を克服して夫婦生活を築くべき婚姻生活の当初に、その努力を放棄した一半の責任は妻にも存する」とし、夫について慰謝料30万円とした。(財産分与は10万円、東京高判昭50.6.26家月28485頁;判時79060頁)

⑤の有責配偶者の資力については、せいきゅうする側の充足感や有責配偶者への慰謝料の制裁的意味等が考慮され、資力が高いほど慰謝料は高くなる。

逆に、義務者の資力を考えて減額した例として、夫が現在肺結核療養中で十分な収入を得られない実情にあることを考慮して、慰謝料30万円とした例(前掲東京高判昭50.6.26)がある。

 

3 離婚原因と慰謝料額

慰謝料が認められる有責行為の具体例とその額を紹介する。

(1)不貞行為

高齢者の離婚で不貞を原因とする場合は、高額の慰謝料を認める例がある。

◇同居期間12年、別居期間36年、夫が別の女性と暮らしている事案で慰謝料1500万円とした事例。(財産分与は1000万円、判例23 159頁)

◇同居期間38年、別居期間17年、夫が別の女性と暮らしている事案で慰謝料1000万円とした事例。(財産分与は1200万円、判例20 126頁)

◇夫の度重なる不貞行為と暴力が原因で破綻したが、夫に多額の財産があり、財産分与として1億円と5000万円相当の不動産の分与が命じられたほかに、慰謝料1000万円を認めた。(横浜地判昭55.8.1判時100194頁)

 

しかし、一般的には慰謝料が500万円を超えることはまれである。例えば、

◇不貞行為をした妻から、これを疑い暴力をふるった夫に対する離婚請求を認めた事案で、妻に200万円の慰謝料を命じた。(財産分与は700万円、東京高判平3.7.16判時139943頁)

16年間の婚姻生活中、次から次へと数人の女性と婚外関係を繰り返していた夫について300万円の慰謝料を認めた。(財産分与はなし、東京高判昭55.9.29判時98172頁)

 

  • 暴力、悪意の遺棄

◇夫が収入を自分の酒食や女遊びに浪費し、妻に対しほとんど毎日のように暴力をふるい、頭髪を引っ張る、手拳で殴打、足で蹴る、下駄で頭を殴ってかなりの裂傷を負わせる、出刃包丁で手指など切りつける、薪割りやスコップを振り上げて追いかけ回す等した事案で、夫について慰謝料500万円を認めた。(財産分与と合わせて時価約1000万円の土地・建物の分与を認めた。大阪家審昭50.1.31家月28388頁)

◇夫が妻の男性関係にあらぬ疑いをいだき、夫の母も嫌がらせ的な言動に出て、妻に家を出るよう強要し婚姻後6ヶ月で別居したが、妻が離婚に同意しないことから、妻方に執拗に嫌がらせの電話や手紙を繰り返し、妻の父母を相手どって言いがかりとしかみえない訴訟を提起したりした事案(婚姻期間は8年)で、夫について慰謝料500万円を認めた。(財産分与はなし。東京高判昭54.1.29判時91871頁)

◇暴力・悪意の遺棄をした夫について慰謝料300万円を認めた。(財産分与は640万円、浦和地判昭59.9.19判時1140117頁)

◇不貞の証明はないが、夫に女性に金員を送る行為などがあり、悪意の遺棄をした事案で慰謝料500万円を認めた。(東京地判昭60.3.19判時118969頁)

◇些細なことで殴る蹴るの暴力をふるった夫について慰謝料400万円を認めた。(横浜地判平9.4.14家月50790頁)

◇夫の激しい暴行や他人の人格を顧みない行動について慰謝料400万円を認めた。(東京高判平10.2.26家月50784頁)

◇夫の度々の暴力により妻が右鎖骨骨折、腰椎椎間板ヘルニアの障害を負い運動障害の後遺症が残った事案で、離婚による慰謝料350万円のほかに、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益として合計1714万円の損害賠償請金を認めた。(判例24 160頁)

 

(3)扶助・協力義務違反や自己中心的な行為がある場合

◇姑が妻をいじめている場合に、夫はこの障害を取り除いて円満を図るべきだとして、1年で破綻したが、夫の5ヶ月分の収入に当たる10万円の慰謝料を認めた。(財産分与は5万円、名古屋地岡崎支判昭43.1.29判時51574頁)

◇婚姻期間3年で、夫が仕事熱心のため帰宅が遅く、夫婦の会話に時間を割かず、円満な家庭を築く夫の努力不足が破綻の原因とされ、100万円の慰謝料を認めた。(財産分与はなし、東京地判昭56.9.16鈴木56頁)

◇年間に数えるほどしか掃除をしない、火災がこわくてストーブがつけられない、年収が6700万円ほどなのに子どもの習い事に年400万円を浪費するなどの非常識な行為をする妻に200万円の慰謝料の支払いを命じた。(大阪地裁平13.7.5法教252175頁)

  • 不利益な事実の不告知

一般的に婚姻の際の自己の不利な事情の消極的不告知は不法行為にならないが、婚姻の決意を左右する重要な事実につき、虚偽を積極的に告知することが信義則上違法の評価を受けることがある。

例えば、夫が婚姻前2年間は安定して職業生活を続けていたから、婚姻前にうつ病であることを告げなかったとしても不法行為にはならないが、妻から追及されたのにひたすら隠し続け、婚姻生活を破綻する行為に出たのは、夫婦間の協力義務を故意に懈怠したもので不法行為にあたるとし、両当事者の資力と社会的地位を考慮し夫に1000万円の支払いを命じた例(東京地判昭61.8.26判時127183頁)

  • 性交渉拒否

性交渉の拒否については、拒否につき正当な理由がなく、それが原因で婚姻が破綻した場合には、慰謝料が認められる。婚姻生活における性関係の重要性から、婚姻に際して性的不能を告知しないことは、信義則違反であるとされる。(京都地判昭62.5.12判時125992頁)

◇夫がポルノ雑誌に異常な関心を示して自慰行為に耽り、妻が性交渉を求めたのに拒否したことなどについて、夫について慰謝料500万円を認めた。(財産分与は1000万円、浦和地判昭60.9.10判夕614104頁)

◇夫は新婚旅行中から妻の体に一切触れようとせず性交渉が皆無で、新婚1ヵ月半で妻が肉体的・精神的に疲れきって実家に帰ったという事案で、夫について慰謝料100万円を認めた。(横浜地判昭61.10.6判時1238116頁)

◇夫が性交渉に無関心で交渉のないまま、婚姻して1ヶ月足らずで別居、離婚した事案で、妻は結婚退職し別居後再就職したが、以前の3分の1以下の収入しかなく、これまでの貯金なども結婚費用として450飛翔万円弱費消していたことから、500万円の慰謝料を認めた。(財産分与はなし、京都地判平2.6.14判時1372123頁)

◇妻が男性に触れられると気持ちが悪いといい性交渉を拒否した結果、けんかが絶えず破綻した事案で、妻について慰謝料150万円を認めた。(岡山地津山支判平3.3.29判時1410100頁)

 

  • 離婚後扶養と慰謝料

◇夫婦の信仰上の問題から婚姻が破綻し、一方に有責性があるとはいえない事案で、妻が結婚退職し別居後再就職したが、月7万円の収入にとどまるのに対して、夫は会社の経理部長で焼く1000万円の年収があることから、夫について慰謝料100万円を認めた。(財産分与はなし、東京高判昭58.9.20判時108878頁)

◇双方の責任で破綻し有責性の程度に差異はないが、離婚によって受ける肉体的・精神的打撃の程度に相当の開きがあるとして、夫について慰謝料15万円を認めた。(夫の月収の6ヵ月分に相当する。大阪地判昭和42.2.13判時49070頁)

これらは、慰謝料に離婚後扶養的な機能をもたせているが、離婚後扶養としての財産分与とした方が理論的にすっきりする。

判例23 東京高裁平成元(1989)年1122日判決(家月42380頁;判時133048頁)

不貞行為につき高額の慰謝料が認められた事例

<事実>

判例9 参照。

<判旨>

慰藉料の金額について検討するに、妻は破綻の原因を作出していないのに自己の意思に反して強制的に離婚させられ、夫が不貞の相手方たるA子と法律上の婚姻ができる状態になることは妻に多大の精神的苦痛を与えることは明らかであり、夫がA子と生活して2人の子供も生まれ、一家によって会社を経営し、相当程度の生活を営んでいることは前記のとおりであり、一方、妻は実兄の家に身を寄せ、今日まで単身生活を送ってきたこと、その他一切の事情を斟酌するならば、妻の精神的苦痛(夫が破綻原因を作ってから本件慰藉料請求反訴状が夫に送達された平成元年728日まで)を慰藉するには1500万円をもって相当というべきであり、本件記録にあらわれた一切の事情を考慮すると、右生活費にかかわる財産分与として夫に1000万円の支払を命ずるのが相当である。・・・・

<コメント>

有責配偶者の離婚請求に関する大法廷判決(判例9 75頁)の差戻審である。慰謝料1500万円のほかに、財産分与として離婚後扶養を中心に1000万円認められている。妻が高齢で1人身であることや夫の資力が、高額の慰謝料の要因になったと思われる。

 

判例24 大阪高裁平成122000)年38日判決(判時174491頁)

離婚訴訟において夫の暴行による障害によって生じた入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益等の計1713万円の損害賠償が併合審理され命じられた事例

<事実>

夫婦は1971(昭4)年に婚姻。

夫は船員として長期間留守にするため妻に家庭内の一切を任せていたところ、妻にややルーズなところがあり、夫は暴力で自分の言うことに従わせる傾向があった。その後夫は益々暴君となり、1995(平7)年3月、妻を一本背負いで投げ飛ばしたうえ、顔面、頭部、腰等を何回も蹴る、殴るなどし、妻はこれにより鎖骨を骨折し、腰椎椎間板ヘルニアの傷害を負った。

<判旨>

入通院慰謝料100万円、後遺傷害慰謝料500万円、後遺障害による逸失利益11135023円、合計17135023円のほか、本件暴行を除く離婚に伴う慰謝料として350万円、財産分与2300万円の支払を夫に命じ、「夫婦間の暴行が、その原因において、相手方が暴力行為を挑発したなどの特段の事情がある場合は格別、単に夫婦関係があることのみから損害額を低く算定すべきであるとはいえない」とした。

<コメント>

夫の暴行による損害賠償を離婚慰謝料と別個に認めたことによって、高額の賠償額となった。

なお旧人事訴訟手続法72項の「訴の原因たる事実によりて生じたる損害賠償請求事件」として併合訴訟が認められるかという問題もあったが、立法的に解決された。(人訴17条1項)

 

4 慰謝料が否定された例

(1)違法性がない場合

◇破綻原因が妻の情緒不安定で衝動的な行動を繰り返したことにあっても、それが妻の精神病質若くは未成熟性の性格によるもので、倫理上道義上の非難の対象となりえないとして、夫からの慰謝料請求が否定された。(東京高判昭51.8.23判時83459頁)

  • 有責性がない場合

◇妻が夫婦げんかから実家に戻り、夫からの再三の帰来の懇請に応じず、嫁入道具・子どもの産着などの引渡しの仮処分の実行などを行った事案で、妻からの慰謝料請求について、精神的苦痛を被ったとしても、それは自ら求めたことであるとして請求を否定した。(横浜地川崎支判昭46.6.7判時67877頁等)

  • 双方の有責性の程度が同等である場合

◇夫は暴力をふるい、妻には不貞行為がある事案で、双方の慰謝料請求を否定した。(東京地判昭55.6.27判夕423132頁)

◇宗教活動の行過ぎという点で妻の有責性は大きいが、夫にも暴力などがある事案で、否定した。(仙台地判昭54.9.26判夕401149頁)

◇熟年離婚で、妻の主張する夫の不貞は認められず、妻の借財・浪費は妻のみを非難することもできないとして、双方からの慰謝料請求を否定した。(東京地判平12.9.26判夕1053215頁)

  • 不貞と破綻の間に因果関係が認められない場合

◇婚姻がすでに夫の不貞以前に破綻していた事案で、慰謝料請求が否定された。(東京地判昭63.10.12鈴木60頁)

  • すでに損害が填補されている場合

◇妻の不貞行為により破綻したが、夫は妻の不貞の相手方からすでに1000万円の慰謝料を得ており、破綻による精神的苦痛は慰謝されているとして、慰謝料請求が否定された。(東京地判昭61.12.22判時124986頁)

不貞行為は配偶者と相手方の共同不法行為であり、両者の慰謝料支払義務は、同額の範囲で不真正連帯責務の関係にあるからである。

◇暴力があり、酒乱、勤労意欲の欠如がみられる夫に対し、妻がむりやり離婚同意書に署名させたという事案で、妻にも責任の一端があるとして、離婚が成立したことによって精神的苦痛は慰謝され慰謝料支払を命じないとした。(東京地判昭60.4.26家月38990頁)異例である。

 

 実務の指針 

離婚慰謝料は、離婚を強いられた者の精神的苦痛を癒すとともに、破綻の責任の所在を明らかにすることによって、婚姻法上の義務あるいは婚姻の倫理を明確にしたり、財産分与の不十分さを補い、離婚後の生活を補償するなどの役割を果たしている。

ただし、判例において精神的苦痛の中身が十分検討されているわけではない。

学説は、離婚による社会的評価の低下、結婚生活に対する期待感の侵害、将来の生活不安、子を手放すことによる心痛、生活上のわびしさなどをあげる。(瀬川信久「判批」法協911177頁、大津91頁)

しかし、離婚観が変化し、離婚をあくとする価値観は薄れつつある。

財産的な面での期待感や生活不安は離婚後扶養も含めた財産分与の中で解消することができるはずである。

子どもの親権・監護権を得られなかったことについては、離婚後の親子関係の構築の問題であり、これも本来慰謝料の対象とすべきではないであろう。

残るものは、人生のパートナーを失う淋しさや悲しさ、望まない離婚を強要されることに対する怒りや敗北感といった純粋に精神的なものになる。

このように考えると、暴行・虐待、自己中心的な言動など破綻原因となった個々の有責行為について、通常の不法行為と同様に慰謝料を認められることはともかく、離婚それ自体の慰謝料を認める必要があるか否か、根本的に検討してみる必要がある。

少なくとも、離婚を拒否する相手に対し離婚請求する場合には、請求側は、婚姻から解放され事由を得るのであるから、離婚自体慰謝料は論理的にもおかしいのではないだろうか。

有責性および慰謝料をめぐる紛争には、非難の応酬による信頼の破壊、子の面接交渉の障害要因を作るという大きな弊害が伴っていることにも注意する必要がある。

調停や裁判上の和解において、解決金あるいは和解金等を表示したり、慰謝料を請求しうる場合であっても離婚後の生活援助との理由で、離婚給付金の支払を説得するのも、早期解決というメリットを得るほかに、前述のような弊害を回避しようとするためである。

なお、離婚原因が民法709条の不法行為を構成するような場合、たとえば暴行、傷害、強姦、業務妨害等の違法行為については、離婚原因慰謝料の中に埋没させず、独立した損害賠償請求訴訟を併合して請求することによって、判例24のように、慰謝料の高額化を図ることができる。

個別不法行為の場合には、損害賠償請求権の消滅時効は、損害および加害者を知ってから3年であるが(民724条)、夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻解消の時から6ヶ月内は、時効が完成しないので(民159条)、この間に裁判上の請求などをすればよい。

 

  • 不貞行為の相手方に対する慰謝料請求

1 判例の倫理と傾向

不貞行為の相手方に対する慰謝料請求について、最高裁は、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両者の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである」として肯定してきた。(最判昭54.3.30民週32303頁;判時9223頁)

民法709条の不法行為の一類型とされる。

離婚訴訟と併合請求することが可能である。(人訴17条一項)

その後、破綻と不貞行為の関係につき、1996(平8)年326日、最高裁は、配偶者の一方と肉体関係を持った第三者は、「婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情がない限り、(配偶者の他方に対して)不法行為責任を負わないものと解するのが相当である」とし、その根拠について、不貞行為が他方の配偶者に対する不法行為となるのは、それが「婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益を侵害する」からであって、すでに破綻していた場合には、原則として、このような権利または法的保護する利益があるとはいえないからであるとした。(判例25 171頁)

何を「破綻」とみるかについては、おおむれ判例は、夫婦の「別居」が先行している場合に破綻していたと判断するようであり、別居後に婚外関係が発生しても、第三者の不法行為責任は発生しないとしている。

離婚訴訟で離婚原因を判断する際には、判例は、別居が開始したからといって直ちに破綻していると評価するわけではないので、離婚原因としての破綻と、不貞の相手方の不法行為責任を判断する際の破綻は、同意義ではないともいえる。

不貞行為によっても、夫婦が離婚や別居に至らなかった場合(破綻にまで至らなかった場合)にも責任が発生するかについては、判例は、慰謝料額を減額することはあっても違法性を否定していない。

学説には、前記判例25の論理からすれば、不貞によって配偶者の精神的平和が乱されたり、家庭内別居になったことがあっても、外形的な別居にまでは至らず、婚姻関係が修復され、何らかの夫婦の共同性を伴って維持されている限り、保護法益は何も侵害されていないとして、相手方の責任を否定することになるとする見解(辻朗「不貞慰謝料請求事件をめぐる裁判例の軌跡」判夕104135頁)がある。

このように解釈されるならば、いわゆる「美人局(つつもたせ)」「ゆすり」型の慰謝料請求を防ぐことができ、また、不貞の相手方女性が、妻からの慰謝料請求をおそれて、婚外子についての認知や養育費の請求をあきらめるという問題も、ある程度解決できる。

しかし、判例は、離婚や別居に至らなくとも、不貞は他方配偶者に多大な精神的苦痛を与え、夫婦関係に深刻な不和をもたらすとして、家庭の平和という法益を侵害したとみるようである。

慰謝料については、公表判例では、100万円から300万円の範囲内が多い未公表判決ではもっと低いものもある。

 

2 肯定例と否定例

(1)慰謝料額の基準

慰謝料額は違法性や損害の程度により異なる。

相手方と配偶者の年齢差、関係の発生あるいは継続についての主導性、相手方の年齢、資力、夫婦関係が不貞行為により破綻に至ったか否か、相手方と配偶者の関係がすでに解消したか、不貞を行った配偶者自身の責任については免除しているか、請求する配偶者が未成熟子を看護しているか、請求する配偶者の側に不貞以前に夫婦間の不和につき落ち度があったか等のさまざまな事情が考慮され、金額が決定される。

被告が男性である場合の方が、女性である場合よりも慰謝料額が高い傾向があるのは、これまでは男性の方が主導的役割を果たしている場合が多く、男性の方が一般に資力があり、相手方が女性の場合には、非婚で子をもうけて生活に困窮している場合もある、などの事情による。

  • 肯定例

a 夫の不貞

◇夫と女性との交際が始まってから20年近く経ち、その間、夫は女性と肉体関係があることを妻に話したり、妻とこの女性を比べるような話をしていたが、夫婦間で話がこじれ、ついに夫が女性と同棲を始めた事案で、女性について慰謝料300万円とした。(大阪地判平11.3.31判夕1035187頁、妻は夫の同棲の差止めも請求したが、棄却された)

◇妻が女性に1000万円の慰謝料請求をしたのに対して、当該関係は夫が主導したものであること、夫がこの女性に走ったことにつき、妻に落ち度や帰責事由がないかどうか疑義もあることなどから、150万円を相当とした。(横浜地判昭61.12.25判夕637159頁)

◇妻から女性に対して500万円の慰謝料請求をしたのに対して、夫が女性の上司であり夫が主導的な役割を果たしたこと、妻は夫に対する請求を宥恕していると認められること、本訴提起の目的は不倫関係を解消させることにあり、目的は達せられたこと、女性が退職し実家に帰ったことによって関係は解消されたこと、夫婦関係は一応修復されていることなどから、50万円を相当とした。(前掲東京地判平4.12.10

b 妻の不貞

◇男性が夫のいる女性と関係をもち、再三の交際を止める旨の話合いにもかかわらず、交際を続け、男性は執拗にこの女性の家族に電話をかけ、庭先で女性の名を呼ぶなどし、さらに女性の夫婦関係を悪化させれば女性が自分のところにくるものと考え、夫の勤務先に、女性との性的関係をつぶさに記載し写真まで添付したはがきを10通送っており、現在、2人は同棲中であるという事案で、500万円という高額の慰謝料を認めた。(浦和地判昭60.12.25判夕617104頁、名誉毀損や嫌がらせ等の人格権侵害行為もあるため高額化した)

◇妻が夫の経営する会社の従業員である男性と性的関係をもった事案で、一般論として「合意による貞操侵害の類型においては、自己の地位や相手方の弱点を利用するなど悪質な手段を用いて相手方の意思決定を拘束したような場合でない限り、不貞あるいは婚姻破綻についての主たる責任は不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方の責任は副次的なものとみるべきである」と述べ、当該ケースもこれにあたるとして、原審の認めた500万円の賠償額(原審は欠席判決のため異例の高額)を200万円に変更した。(東京高判昭60.11.20判時117473頁)

10年以上夫と性的関係のない妻が、男性と知り合って4年後、性的関係を持ち、夫の抑止にもかかわらず男性と同棲するに至った事案で、夫から男性に対する100万円の慰謝料請求を認めた。(東京地判平10.7.31判夕1044153頁、請求額は800万円および弁護士費用147万円)

  • 否定例

a 破綻後の不貞である場合

最判平8.3.26(判例25 171頁)の以前にも、婚姻関係が他の原因によってすでに破綻している場合には、不法行為責任を否定するものがあった。

例えば、夫婦の間で子どもの結婚後、離婚するという話合いがなされ、夫の単身赴任を機会に別居が始まった後で、夫が他の女性と仮祝言をあげて同棲生活に入ったという事案で、この女性は、妻の主操請求権や家庭生活の平和を違法に侵害したとはいえないとした。(東京高判昭60.10.17判時117261頁。その他、名古屋地判昭54.3.20判夕392160頁、東京高判昭52.8.25判時87288頁)

b 婚姻の平穏が害されなかった場合

古い判例の方が、この損害賠償請求を制限的にとらえようとした感がある。

例えば、夫の不貞があっても円満な夫婦関係が維持され、妻も子も夫を宥恕し、夫は地域社会から格段の責めを受けていないこと、夫と相手方女性の責任は相等しいこと、相手方女性から夫に対する貞操侵害による慰謝料請求が棄却されたこと等の事情から、信義則・公平の観念に照らし損害賠債権の発生を認容するは当を得ないとした。(山形地判昭45.1.29判時59976頁)

c 夫の行為が第三者に対する強姦・性行為の強要である場合

夫が女性に暴行・脅迫を加えて関係を強要・継続した事案で、夫に全面的に責任があるとして、妻から女性に対する慰謝料請求を否定した例(横浜地判平元.8.30判時134778頁)がある。

セクシュアル・ハラスメントという概念が社会的に浸透していなかった時代の判例であるが、最初の関係は強姦によるものであり、相手方女性は被害者というべき事案である。

d 権利の濫用にあたる場合

妻から相手方女性に対する慰謝料請求について、妻が女性に対して夫との夫婦仲が冷めており離婚するつもりである旨を話したことが不貞の原因になっていること、その後、不貞を知った妻が、慰謝料の要求をするにとどまらず、夫の女性に対する暴力を利用して、さらに金員を要求したことなどの事情を勘案し、信義則に反し権利の濫用として許されないとした。(最判平8.6.18家月481239頁)

 

3 不貞の慰謝料請求の消滅時効

不貞の慰謝料請求の消滅時効は、いつから進行するかという問題がある。

最高裁は、1966(昭41)年頃夫の不貞が始まり同棲に至り、妻から1987(昭62)年8月に慰謝料請求提訴がなされ、同年12月まで21年間不貞が続いた事案で、「一方の配偶者が右の同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行する」として、訴え提起日から3年前の19848月より前に同棲関係を知っていたのであれば、慰謝料請求権の一部はすでに時効により消滅した(3年前から提訴日までの分の損害は消滅しないの意味)として、原審を破棄し差し戻した。(最判平6.1.20判時150375頁)

継続的不法行為の消滅時効に関する判例(大判昭15.12.14民集19242325頁)にしたがったものである。

つまり、配偶者が不貞行為あるいは同棲を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行することになる。

これに対しては、精神的損害は不可分な損害でかつ蓄積されていくものだから、もし不貞の慰謝料を認めるのであれば、不法行為の継続が終了した時点、つまり離婚が成立した時点であるとの批判がある。(松本克美「判批」判時15181頁。ただし、松本説は不貞の慰謝料否定説である)

しかし、判例25171頁)について、婚姻破綻後の性的関係は不法行為にならないと解すると、例えば、夫が不貞をして家を出てその女性と同棲を始めたような場合、その女性の不法行為責任は、同棲するまでの関係に限定されるから、すでに不貞の事実を知っているときには、夫の家出から3年以上経過すると、妻から女性への慰謝料請求権は時効消滅することも考えられる。

この論点に関する高裁判決がある。

夫と20年近く同棲している女性に対する妻からの慰謝料請求の事案で、原審は、不法行為を構成するのは婚姻が完全に破綻するまでの肉体関係に限定し、消滅時効が成立するとした。

これに対して、控訴審は、離婚に至らせた女性の行為を不法行為としてとらえ、離婚が成立したときに初めて不法行為を知り損害の発生を確実に知ったこととなるとし、消滅時効は離婚判決確定時から進行するとして、200万円の慰謝料を認めた。(東京高判平10.12.21判夕1023242頁)

控訴審は、女性が夫との間に子をもうけ、夫の実家に再婚した妻と称して入り込んだことなどに対し、原告妻が「強い憎しみを抱いており」、家庭を守るため離婚を最後まで望んでいなかったにもかかわらず、離婚をやむなくされたことに、深刻かつ多大な精神的苦痛を被ったとする。

最判平6.1.20と判例25の理論の中で、配偶者の被害感情を満足させようとした解釈であるが、それは、離婚をやむなくされたことによる慰謝料であり、不貞の慰謝料とはいいがたい。(橋本40頁)

裁判所は、保護法益が何なのかを、再度、明示する必要がある。

4 配偶者との関係

  • 配偶者に対する免除・求償

不貞行為は、配偶者の一方と相手方との共同不法行為である。

しかし、配偶者の責任を問わず、相手方の責任だけを追及することも少なくない。

共同不法行為による損害賠償債務は、不真正連帯債務であるが、連帯債務に関する民法437条(免除の絶対的効力)は適用されない(最判昭48.2.16民集27199頁)から、配偶者については損害賠償債務を免除し、相手方の責任だけを追及することは可能うである。

 

不貞行為から離婚に至った妻が、相手方女性に300万円の慰謝料請求をした事案で、1審は300万円の慰謝料を認め、原審は、夫との離婚調停で「条項に定めるほか名目の如何を問わず互いに金銭その他一切の請求をしない」という条項は、共同不法行為による損害賠償債務について夫の負担部分を免除する意義を有し、女性のためにも効力を生ずるとして慰謝料を150万円に減額したが、最高裁は、判例・通説の立場から免除の絶対効を否定し、本件では、女性に対して慰謝料全額を請求する意思があったといえ、女性に対する免除の意思は認められないとして、1審が正当とした。(最判平6.11.24判時151482頁)

下級審には、破綻の危機により妻が被った精神的苦痛に対しては、「第1次的には配偶者相互間においてその回復が図られるべきであり、この意味でまず夫がその責任に任ずるべき」だとし、妻が相手方だけに請求していることを、「夫に対する請求を宥恕しているもの」と評価し、請求額を大幅に減額して認容し(500万円の請求に対し50万円)、なおかつ、共同不法行為者の「いずれかが損害賠償債権を満足させる給付をすれば、他方は給付を免れ、給付をした者は他方に対して負担割合(本件においては夫の負担割合は2分の1以上と認められる)に応じて求償することのできる関係にある」と言及する例(東京地判平4.12.10判夕870232頁)がある。

この論理によれば、妻は相手方女性から慰謝料を得ても、女性から夫に対して求償請求があれば、夫婦の財産関係からみると、妻が女性から得た金額は実質的にさらに半分以下に減ることになる。

求償請求を肯定することは、夫婦関係が継続している限り、結果的に免除の絶対的効力を認めるに等しい。

不貞行為の場合、被害配偶者の側からは、配偶者に対する感情と、相手方に対する感情には差異があり、相手方の慰謝料が減じられることは本意ではないかもしれない。

しかし、不貞行為は、配偶者と相手方によって初めて成り立つ共同不法行為であり、配偶者を免除するのであれば、相手方の責任も軽減されるのは当然ではないだろうか。

 

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離婚準備中にやるべき事②https://shiki-office.com/archives/11776Mon, 10 May 2021 20:31:14 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11776破綻原因の証拠をあつめる
  1. 破綻原因と証拠
 破綻原因原  因証  拠有責性の質と量
不貞夫婦以外の異性と性的関係を持つこと写真(ホテルやアパートに入っていく所や夫婦以外の異性と親しくしている場面など)・手紙・メール・調査事務所の報告書・目撃者の証明書等100%慰謝料に上積み
暴力不当な有形力の行使診断書・写真(受傷部分)・周囲の人の証明書・自分の書いた陳述書等100%慰謝料に上積み
酒乱酒を飲んで暴力・暴言を働くこと診断書・写真・周囲の人の証明書・自分の書いた陳述書等100%慰謝料に上積み
遺棄生活費等を渡さず捨て去ること周囲の人の証明書・自分の書いた陳述書等100%慰謝料に上積み
浪費無駄遣い借金関係資料・買物や飲食の請求書・自分の書いた陳述書等0%から100%慰謝料に関係
性格の不一致人生観・価値観の隔絶自分の書いた陳述書・第3者の陳述書等場合による場合による
性の不一致通常の性生活のないこと自分の書いた陳述書0%から100%慰謝料に関係
宗教活動他方配偶者の承諾なくして排他的宗教活動を行うこと宗教活動関係資料・自分の書いた陳述書等0%から100%慰謝料に関係
病気強い精神病の場合のように意思や感情の交わりができない場合診断書・自分の書いた陳述書等無関係無関係
  • 決定的破綻原因──不貞・暴力・酒乱・遺棄
    夫婦が持つ貞操権、人格権、相互扶助権の侵害にあたり、決定的な破綻原因です。これらを行なった者は、いわゆる有責配偶者であり、離婚を請求されて当然です。
  • 相対的破綻原因──浪費・性格の不一致・性の不一致・宗教・病気等
    これらの場合は、改善の努力や介護の有無、仕事や家事その他への影響の有無など状況に応じて離婚理由になったりならなかったりします。特に、人生観・価値観の隔絶となると、はなはだ主観的であり、明確な物差しはないように思いますが、性格の不一致で離婚になった夫婦もいます。

こんなものも証拠

証拠とは事実が残した痕跡です。デジタルの写真は、映像という形で痕跡が残ります。手紙を出せば、手紙という痕跡が残ります。彼、あるいは彼女から電話があり、急いでメモをとったとします。そのメモも証拠ですが、メモ帳の次の紙片に残された字の跡も証拠です。セックス後の始末紙や毛も証拠ですが、これが誰のものかとなると科学警察の力が必要となりますから、殺人事件にでも発展しない限り、通常、このようなものは証拠となり得ません。

  • 写真──腕を組んで歩いていた写真や車内で抱擁していた写真など。(暴行傷害の証拠として提出されることもあります)夫婦親子が仲睦まじく生活していた写真(性格の不一致事件で被告側から、仲のよかった時代の証拠として)
  • 調査事務所の報告書──追跡して、2人がホテルへ入る所、出てくる写真を撮影し報告書を添付したものなど。(不倫関係の証拠として) 
  • 日記・手帳類──相手方が異性関係を記した日記や手帳は、証拠として決定的な価値があります。
  • 相手方が告白したことを記した、ご自分の日記や手帳は、嘘が混じることがあり得ますから、証拠としての価値は少なくなります。
  • 手紙・メモ類──相手方の書いた手紙は証拠として価値があります。したがって、ここでも異性関係が記されていれば、決定的な証拠になります。しかし、第三者の手紙となると、その第三者が公平な立場の人でない限り、自分の書いたものと同様の価値しか認められないでしょう。
  • メール──これは改ざんが簡単にできそうですから、相手方のメールであっても、証拠としての価値は手紙やメモより劣りそうです。
  • 年賀状・暑中見舞い──これも内容が年賀と暑中見舞いですから、ないよう面から、証拠価値が少ないようです。しかし、筆跡が争われた場合は、本人の字であることを証明する手がかりになることがあります。
  • 診断書──暴行傷害の証明には欠かせません。証拠としての価値は大いにあります。
  • 陳述書──ご自分や親戚・友人などの証言は、あらかじめ「陳述書」という形で作成しなければなりません。③や④のように、決定的証拠とはなり得ませんが、これらの陳述書なくして裁判はできません。
  • 戸籍謄本・住民票写し・不動産登記簿謄本・課税証明書等──これらは公文書ですから、証拠としての価値は大です。しかし、婚外子を作って認知したような特別の場合を除き、離婚原因を証明することにはなりません。
  • 音声──「反訳」といって文字に直し、データと反訳文をセットにして提出しなければなりません。暴言や屈辱的発言、脅迫などの肉声テープは証拠価値が大です。しかし、話し合いをデータにした場合は、自己に有利な部分だけを記録しておくという修正の可能性がありますから、証拠としての価値は必ずしも高いとはいえず、ケースバイケースです。
  • スナックのマッチ箱──破綻の端緒の証拠として登場しそうですが、裁判で出されることは少なく、スナックが、夫の素行とどういう関係にあるのか、飲酒が問題なのか、スナックのママさんとの浮気が問題なのか、その辺の関連を突き止めねばなりません。
  • 女性あるいは男性の名刺──この名刺が妻あるいは夫の素行とどういう関係があるのか、⑪と同様に異性としての交際の程度が問題となります。これも破綻の端緒として登場しそうです。
  • 不相当な贈り物──これも、誰が、いつ、なぜ贈ったのか事情が問題となりますから、プレゼントを見つけただけでは意味がなさそうです。
  • ワイシャツにつけられた口紅──破綻の端緒として問題となります。しかし、電車の中でつけられたかもしれません。ワイシャツや背広の、どの場所の、どういう口紅か、よく観察しておかねばなりません。また、事情を聞きだしておく必要もありそうです。
  • 下着に附着した体液や毛──破綻の端緒として出てきそうです。発見したときに、よく観察して、質問しておく必要があるかもしれません。こういうときこそ、こっそり音声をとっておきたいものですが、冷静でいられるかが問題です。
  • 携帯電話の記録──パートナーの交際範囲を知っておかねばなりません。その交際範囲と電話の記録が一致するかどうか。これも、日頃の観察が必要です。

人は行動すれば、痕跡を残します。酒を飲めば酔うごとく。その痕跡が証拠ですから、証拠は、本来、探せば限りなく存在するはずですが、例えば浮気をした場合、証拠を残さないよう行動するわけですから、簡単には見破れません。日頃の人間観察、パートナー観察が必要な所以です。「おかしい」と気付いたときには、痕跡がなくなっていることもあります。

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離婚準備中にやるべき事①https://shiki-office.com/archives/11774Mon, 10 May 2021 20:26:06 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11774離婚準備中にやるべき事①

離婚は、子どものいない人は一人でいきていくこと、子どもを引き取る人は一人で子どもを育てていくことです。その覚悟をしつつ、あらかじめ考えておくことは山積みです。

離婚を決めていきなり言い出すのは得策ではありません。「離婚してください」そう言った後も同じ家に住めますか?難しいですよね。

お金をどう捻出するか(自分の個人財産を把握することから)

・離婚に必要な費用(諸手続き、弁護士、公証人など)
・離婚後の生活費(引越し費用なども)

やるべき事
まずお金を貯める(目標百万円、ムリならできるだけ)
自分名義の口座に資金作りをする
自分名義の銀行口座を持つ
結婚前の預貯金や相続金は、家計と分ける
自分の収入からも貯蓄をする
生命保険の受け取りを自分にする

住居をどこにするか

住む場所を確保し、徐々に荷物を整理し、子どもの転校先を調べます。
婚姻中の住居に住み続ける(自己名義の場合/財産分与で)
実家に戻る(実家と要相談)
新しい所に住む(資金・条件を検討)

仕事をどうするか

現職を続ける
求職する(条件に合う仕事があるか、いつからどのように求職活動をするか)
就職に備える(離婚までに職業訓練や資格の取得は可能か)

結婚で姓を変えた側なら、離婚後に名乗る姓をどうするか

姓は選べる
離婚の際には、離婚後に名乗る姓を選択できます。
結婚前の、いわゆる旧姓に戻る場合には手続きがいりませんが、婚姻中の姓を名乗るには市区町村役場に届出が必要です。

離婚から3ヶ月以内に、「離婚の際に称していた氏を称する届」を役所の戸籍係に提出すれば認められます。所定の用紙に署名・押印するだけで、理由も、相手側の許可も不要です。新しい戸籍に記される姓は、婚氏になります。この時に決めた姓は本名として戸籍に記されるため、これを変更するには、よほどの事情がなければ認められません。ですから、特に子どもがいる場合には、姓については熟考が必要でしょう。3ヶ月以内に手続きをしなかった場合、家庭裁判所で氏の変更許可の審判を申し立てなければなりません。

戸籍の筆頭者でない側なら、戸籍をどうするか

・親の戸籍に戻る(子どもがいない場合のみ)
・新戸籍を編纂する

戸籍と姓

夫婦は、結婚の際にどちらかの姓を選びます。その時に選んだ姓(婚氏)のほうが、新しく作られた戸籍の筆頭者になります。婚姻中の2人は、その同じ戸籍に入っています。離婚すると、筆頭者でないほうがその戸籍から除籍され、筆頭者は残ります。除籍されたほうは、結婚前の戸籍にもどるのか、単独で新しい戸籍を作るのかを選択することになります。ただし子どもがいる場合、子どもと一緒に親の戸籍に戻ることはできません。戸籍は「夫婦と子ども」を原理としているので、「親子」以外は1つの戸籍に入れないのです。また、姓がちがう人間が1つの戸籍に入ることもありません。

財産分与をどう希望するか

割合、清算方法など

財産分与=共有財産の清算

財産分与とは、婚姻中に夫婦が築いた共有の財産を清算することです。婚姻生活に必要な家財道具をはじめ、土地・建物などの不動産、車、預貯金、有価証券などが該当します。所有名義が夫婦のどちらかになっていても、それを所有するにはもう一方の協力があったことが考慮され、共有財産とみなされます。これらの財産を清算する際は、時価を基準にして評価を決定します。結婚前からの貯金や嫁入り道具、親から相続した遺産、贈与された財産などは、夫婦の共有財産にはなりません。財産分与は、離婚理由に関係なく行われるものです。また、離婚届を出した後でも、2年以内なら請求の権利があります。

家を分与する際の注意

土地建物を現物のまま分与する場合、所有権移転登記手続き、つまり名義変更をしなければなりません。名義変更の手続きにも費用がかかるので、どちらがそれを負担するかについても、決めておきましょう。
賃貸住宅の賃借権の分与も、離婚の時点で行なわなければなりません。その物件を出ることになった時は敷金の返還請求権もあるので、はっきりさせておくことが必要です。

分ける割合を決める

財産を評価して総財産額が決まったら、双方で分け合う割合を決めます。裁判所では「寄与度説」といい、夫婦がどれくらい共有財産の形成に寄与したかが評価されます。基本的には、収入に関わらずそれぞれ半々の寄与があると評価されます。

裁判所を通して請求する場合

財産分与の金額や方法は2人で話し合って決めることですが、離婚調停の中でも話し合えます。また、裁判所に申し立てて請求することができます。
離婚後も2年間は請求する権利があります。

財産分与請求
申立先:家庭裁判所(相手方の住所地、または相手方と合意した所)
費  用:1200円(収入印紙)+郵便切手(80円×10枚)
必要な物:・「家事調停申立書(財産分与)」(所定の用紙)
・申立人の戸籍謄本 1通
・相手方の戸籍謄本 1通
・不動産の登記簿謄本 1通(未登記なら固定資産評価証明書)
※切手の額や必用な物は、裁判所によって異なる場合があるので、問い合わせてください。

慰謝料の予想

発生するか、いくらか
慰謝料の相場は2~400万円ですが、婚姻期間が長ければ4~800万円と上がっていきますし、夫側が一方的に悪い場合には6~800万円もらえる場合もあります。(あれば、のはなしですが)1000万円近くというのは芸能人の話で一般庶民はそんなに高額ではありません。
夫が自営業かサラリーマンかにもよりますし、夫婦のケースによります。

慰謝料 ・・・離婚原因となった事実によって苦痛を受けた側に対し、その事実を作ったほうは、損害賠償として「離婚原因慰謝料」(以下、慰謝料)を払う義務があります。その「苦痛」が慰謝料の対象になるかどうかは、「離婚原因」が基準ですが、払う側の収入・結婚期間・子どもの有無などが考慮されるので、慰謝料の額はまちまちです。協議離婚なら2人の話し合いで、その他は、それぞれの法的な手続きの過程において他の条件と一緒に決めていくことになります。

支払方法

慰謝料は、金銭での支払が一般的ですが、不動産や株で支払われる場合もあります。
金銭での慰謝料に対して、受け取る側は非課税です。不動産を処分して支払う場合は、支払う側に譲渡所得税がかかります。
一括払いが原則ですが、分割の場合もあります。受け取る側にとっては、一括払いが理想です。分割にすると、途中で相手が支払わなくなったり、死亡したりと、トラブルが予想されるからです。協議離婚なら、「分割金を1回でも支払わなかった場合は、残金を一括して支払うとともに強制執行を受けても異議ありません」という文章を入れた「公正証書」を作成するのがいいでしょう。

離婚後の慰謝料請求

離婚の時点で受け取っていなくても、離婚届を提出して3年以内なら、相手に慰謝料を請求できます。ですから離婚時点で支払能力がなく慰謝料がなかったとしても、3年以内に財産ができれば、請求が可能です。
双方で合意ができなかった場合は、慰謝料請求の調停を申し立てることができ、調停で決まらなければ裁判になります。

慰謝料請求の調停
申立先:家庭裁判所(相手方の住所地、または相手方と合意した所)
費  用:1200円(収入印紙)+郵便切手(80円×10枚)
必要な物:・「家事調停申立書」(所定の用紙)
・申立人と相手方の戸籍謄本 各1通
※切手の額や必用な物は、裁判所によって異なる場合があるので、問い合わせてください。

 

子どものいる人は・・・

親権・監護権について

父親が取る (経済状態は? 育児ができるか? バックアップはあるか?)
母親が取る (経済状態は? 育児ができるか? バックアップはあるか?)

※ 親権者 ・・・ 親が子どもに関して持つ権利・義務の総称です。親権者は、子どもの生活や教育に関する権利・義務(身上監護権)や、財産に関わる権利・義務(財産管理権)を持ち、子の法定代理人になります。
子どもが15歳未満の場合、養子縁組も親権者が子に代わって承諾します。再婚で子が新しい配偶者の養子となった場合は、養親も親権者になります。
離婚によって一方が親権者となり、その親権者が死亡した場合、もう一方が自動的に親権者になるのではなく、後見人が立てられます。後見人は最後の親権者の遺言に従いますが、遺言が無い場合は家庭裁判所が決定します。親権は戸籍に記載され、変更には裁判所の手続きが必要です。

親権者の決定

協議離婚:離婚届を出す前に2人で決める
調停離婚:他の離婚条件と同様に調停で決まる
裁判離婚:判決によって決まる

親権=財産管理権+身上監護権

※ 監護者 ・・・「監護権」は子どもを監護・教育する権利で、親権の一部です。
監護者を親権者が兼ねる場合が多いのですが、別にすることもできます。親権を持たなくても、監護権があれば、子どもを引き取る権利があります。
監護者は親でなくてもよく、子の利益に最も適していると判断できれば、祖父母やおじ・おば等でもかまいません。乳幼児の監護者は、よほど不利な事情がない限り、母親のほうが適していると判断されます。
監護者は、当事者の協議によって変更できます。また、戸籍には記載されません。

養育費について

・子どもの養育にいくらかかるか
・ともに暮らさない側が、いくらはらえるか
養育費は払わなくなる人もいるのであまり当てにはできません。口約束ではなく、「公正証書」を作ってもらいましょう。(サラリーマンなら支払わなくなると給料から天引きしてもらえます。)本人は払う記満々でも、再婚したりすると、新しい妻が「払わないで」などと言うかもしれませんからね。

面接交渉について

・頻度・回数、面会方法(子どもの心の安定を図りながら)
面接交渉   親権も監護権も得られず、子どもを引き取れなかったとしても、親には自分の子どもに面会する権利(面接交渉権)があります。
面接交渉権は親として当然の権利で、もう一方の親は子どもに会わせるのを拒否することはできないのです。
親権や監護権と同様に、面接についても離婚の際の協議で決めます。
具体的な内容を決めて、書面にしておきましょう。

・面接の頻度(標準は、月1回、年2回の2泊3日程度)
・面接の時間の長さ(何時間、何日など)
・宿泊してよいのか
・場所や日時は誰が決めるのか
・電話や手紙のやりとりを認めるのか
・誕生日などにプレゼントをできるのか
・どのような会い方をするのか
・学校行事へ参加できるのか
・子どもの意思をどうするのか
・子どもの受け渡しの方法
・内容を変更する場合はどうするのか
・連絡方法はどうするのか

調停の申し立て方

協議で決まらなければ、調停で決めます(不成立なら審判手続き)。離婚の際に面接交渉権を放棄したとしても、それは不適法な合意ですから調停を申し立て無効にできます。逆に、面接交渉を決めても、そのために子どもが情緒不安定になったり学習意欲を低下するなでの悪影響があった場合には、一時停止を求めることができます。また、相手が勝手に子どもと会ったり、子どもを連れ去ろうとしたりする場合は、面接交渉権の制限を申し立てることができます。

申立先:家庭裁判所(相手方の住所地、または相手方と合意した所)
費  用:1200円(収入印紙)+郵便切手(80円×10枚)
必要な物:・「家事調停申立書(面接交渉)」(所定の用紙)
・自分、相手、子どもの戸籍謄本 各1通
※切手の額や必用な物は、裁判所によって異なる場合があるので、問い合わせてください。

面接交渉が認められる基準は、子どもの利益と福祉です。会うことで子どもに悪影響がある場合には、面接交渉権が制限(面接を禁止、親権者同伴で会うなど)されます。

面接交渉が認められない場合
・親権喪失事由がある(暴力、覚醒剤使用など)
・支払い能力があるにもかかわらず養育費を負担しない
・子どもや監護者に暴力をふるったり、悪影響を及ぼすおそれがある
・子どもが面接交渉を望んでいない

子どもの姓をどうするのか

・子どもの戸籍
両親が離婚しても、子どもは婚姻中の夫婦の戸籍に残ります。
例え親権者が母親でも、戸籍を離れたら、子どもと母親の戸籍は別になります。
この場合、母親が子どもを自分の戸籍に入れるために、自分で新しく戸籍を作り、子どもの入籍届を出さなければなりません。
もちろんその場合は、実家の戸籍には戻れません。

Ⓠ 子どもがいるので、新しい戸籍を作ります。
本籍地はどうなるのでしょうか?

新しい戸籍を作る場合、本籍地を自由に決められます。
離婚後に生活する住所を、本籍地にしてもいいのです。

 

相手に請求するお金を考える

・相手の収入と預金口座、財産をすべて把握する
・子供の養育費、日常の生活費の概算を出す

控えておくもの
 預貯金の記帳内容
 相手の給料の振込み口座(離婚後に養育費を回収するため)
 生命保険の証書番号
 相手の年金の基礎年金番号
 家のローンの借り入れ返済額

自分側が有利になるような証拠を探します
緊急を要しない場合は数ヶ月かけてもいいのです。
ギャンブル・暴力・浮気・借金などの証拠を見つけておきます。
 携帯電話やパソコンのメールや履歴、写真など

用意するお金

離婚の費用
各手続きにかかる費用、公証人、裁判所、弁護士など

離婚後の自立のための費用
生活用品、生活費、家賃などで、目安は100万円

専業主婦のための確保しておくお金の話
離婚後に、経済的に苦しくなる可能性は女性のほうが高いものです。まして専業主婦だった人や、子どもを引き取ることになった人にとって、お金は深刻な問題です。一般に母子家庭の平均年収は、同年代の一般家庭の3割程度と言われています。夫の多くは、会社からの扶養手当や税金の扶養控除がなくなるぐらいの変化ですが、フルタイムで働いていない妻のほうは離婚貧乏になってしまう可能性があるのです。

離婚後の収入は、婚姻中と同じ職に就いている場合はあまり変化しませんが、離婚後に就職した場合には、格段に低くなっているのが現状です。ですから、離婚準備金はなるべく婚姻中に貯めて、財産分与や慰謝料など受け取れるものについてはしっかり検討しておかなくてはなりません。自分の財産を確実に把握し、貯蓄しましょう。結婚前の貯金や両親からの相続、結婚後のパートなどの収入、へそくり……。離婚後の明るい未来のためであると同時に、お金があれば離婚交渉も強気で進められます。

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離婚後の生活https://shiki-office.com/archives/11771Mon, 10 May 2021 20:13:56 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11771離婚後の親権者の住まい
女性男性
転居した66%27%
転居しない33%71%
賃貸住宅55%25%
親の実家27%28%
持ち家11%41%
給与住宅1%4%
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これだけの好条件なのに、なぜ妻は離婚してくれないのか?(夫からの離婚)https://shiki-office.com/archives/11769Mon, 10 May 2021 20:06:05 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11769これだけの好条件なのに、なぜ妻は離婚してくれないのか?

 調停委員へのプレゼンテーションの方法を知り、自分自身にしっかりと向き合い、ある程度の法律知識も身に付けたうえで行うのが、「ネゴシエーション(交渉)」です。

交渉について、次のような質問をよく受けます。「僕は完璧な資料を準備し、言葉遣いも含めたすべてのことに気をつけて交渉したのに、『離婚したい』という、たった1つの要求を妻にも調停委員にも聞き入れてもらえません。どうしてでしょう。十分な条件を提示したのに、それ以上の条件を出せと妻から言われていますが無理です。どうしたらいいんでしょうか。」

結論から言えば、「たった1つの要求」だからこそ、妻には受け入れられないのです。

彼の要求は離婚成立のみ。それ以外は、すべて妻側に有利な条件を出したと言います。

彼が出した条件は、預貯金をすべて妻の名義に変更する。ローンを完済した自宅は妻に明け渡し妻名義に変更する。子どもの親権は母親。一人娘の養育費は月額8万円。娘にかかる学費は必要な時に請求したものを彼が全額支払う。銀行から借入して1000万円の慰謝料も準備している。離婚が成立するまでは別居とし、婚費月額50万円を振り込む。

まったく、なんていい夫なんでしょう。これでは、妻は離婚に応じないまま、自宅名義を妻自身に書き換え、預貯金をすべて手元において、婚費50万円を受け取り続けるという道を選択したくなるでしょう。

では、なぜ好条件であるにもかかわらず、妻は離婚を受け入れることができないのでしょうか?

それは、妻が夫を愛しているからではなく、あまりの好条件を提示してきた夫に対して、一度は深く憎しみを抱き苦しむからです。「財産をすべて投げうって借金してまでわかれたいのか。ただ1つの望みである離婚だけは絶対に成立させてやらない」と逆に意地になるのも当然といえます。さらに言えば、「夫が好条件を出していたタイミングで別れておけばよかった。その後、どんどん条件が悪くなってしまった」と後悔するのも妻たちの常ではありますが。

相手に「勝たせ」、自分も「勝つ」

 離婚は、結婚の失敗という意味においては、夫も妻も「負け」です。その負けを少しでも減らしたいがために戦うことが、調停をはじめとする係争です。「負け」からスタートするからこそ、相手に「勝ち」を与えるのが交渉のうまいやり方であることを心得ましょう。

したがって、ただ1つの項目だけを提示するより、はじめは3~4項目の要求を行い、交渉の途中で、そのうちの2~3項目を相手へ譲るつもりでスタートすることです。交渉の入り口で、あらかじめ相手に「勝たせる」項目を織り込んだ要求内容を提示することによって、最終的にあなたが望む「最優先事項」の要求を通すことができるのが「交渉」の真髄であると認識してください。

条件提示を複数にすることによって、話し合いに同席する調停委員も、調停終了の目処を立てやすくなります。複数の要求の中から、あなたが「勝ち」としている望みをかなえる決着に向けて、調停委員は、少しずつ相手方にも「勝ち」を渡しながら説得を試みてくれるでしょう。このようなアプローチをとることによって、調停委員をある意味では味方につけることもできます。

このことはけっして過大な要求をふっかけろと勧めるものではありません。調停では、自分の要求が100%通るわけではないことを理解した上で、40~60%の要求が通ることによって、自身も「勝った」気持ちを味わうことができるし、相手も60~40%の「勝ち」を得ます。ケンカ両成敗ではなく、相手に「勝ち」を渡して自分も「勝つ」交渉を行います。

自分の要求内容が相手の要求と衝突するとき、さまざまな要素を考慮してお互いの受け入れ可能な合意点を探ります。たった1つの相違点しかなければ、妥協点を見出すのは困難ですが、いくつかの食い違いがあれば、双方にそれなりにメリットのある、あるいは落としどころとしての合意を見出しやすいのです。そのためにも、初めからあらゆる点を諦めて1点集中型の要求をするよりも、多数の相違点を抱え込んだまま交渉を進めて、しなやかに合意を見出すという交渉態度が望まれます。

離婚を成立させるための交渉術

 夫が離婚を希望する場合

「離婚しやすい」条件とは

 好条件を持ちかけたにもかかわらず、初回調停で妻から「離婚拒否」の意思表示をされた夫は不安になります。今後調停の回数を重ねても、婚費などの別居条件だけが確定して、離婚は成立せずに調停を終えるのではないかという怖れです。たしかにその可能性もあります。では、彼が離婚を成立させるためには、どういった要求をすればよかったのでしょうか?

 夫の実際の提示 交渉のための要求
①離婚する①離婚する
②預貯金をすべて妻の名義に変更②預貯金は夫と妻で折半にする
③自宅は妻の名義に変更(ローン完済)③自宅は妻が評価額の半額で買い取る
④慰謝料1000万円(銀行借入)④慰謝料なし
⑤子どもの親権者は母親⑤子どもの親権者は母親
⑥一人娘の養育費は月額8万円⑥一人娘の養育費は月額4万円
⑦娘の学費は請求に応じて全額支払う⑦娘の学費は別途協議で決める
⑧離婚成立まで婚費月額50万円⑧離婚成立まで婚費月額18万円
⑨別居の場合は夫が家を出て賃貸独居⑨別居の場合は妻子が実家へ戻る

左の「好条件」要求では、妻が離婚しなければならない理由が存在しません。「多額の金を払い、借金を抱えてでも別れたい」という夫の気持ちに対して、憎しみを抱くだけです。その結果、「夫が一人でアパートに引越し、毎月50万円を確実に受け取ることができるのであれば、私は離婚しません」となります。夫の要求内容が、まるで妻の発言を誘導したかのような結果です。

では、右の「交渉のための」要求ではどうでしょうか?初回調停で、夫から右の内容の要求を受けた妻は、こう考えます。

「冗談じゃないわ。離婚なんかしない。預貯金が半分しかもらえなければ離婚後の生活だってままならない。預金半分と慰謝料100万円を合わせても、自宅を買い取る金額にはなりそうもない。といって名義は夫のままだから、離婚を避けて別居となったときには、娘と私が実家へ戻って娘を転校させなければならない。親権は私が得るのは当然だが、養育費4万円では公立学校へ転校せざるをえなくなる」

妻は不安になります。この不安感情を引き出した後に、調停の回数を重ねながら、①~⑨の項目について少しずつ夫が譲歩をはじめるのです。また、調停委員が、妻の利得を守るスタンスを取ってくれた場合は、「ご主人の言い分は一方的すぎますね、もう少しなんとかならないか説得してみましょう」と伝えてもらってもいいでしょう。

 夫が譲歩しながら行う交渉のステップ

  • 離婚する……これは、終始一貫変わらない条件として、毎回調停入室時に、調停委員へ向け繰り返し伝えます。
  • 預貯金を折半にする……この条件も調停3回目までは絶対に譲歩しない覚悟で申し出ます。最終的に離婚成立となるときには自宅を妻子に明け渡す予定であるため、離婚後の生活準備金として確保するためにも譲歩することはできません。
  • 自宅は妻が評価額の半額で買い取る……調停で自宅の財産分与を考える場合は、購入額ではなく現在売買される不動産評価額を基準とします。自宅については、2回目以降の調停で譲歩の姿勢を見せます。おっとがそのまま自宅へ残るのであれば、不動産評価額の半額を分割で支払います。交渉の最終段階において、夫から「別居期間なしで即離婚成立であれば」という「条件」で、妻に自宅を譲る提案をしてもいいでしょう。ただし、これは微妙なニュアンスなので、調停委員からニュアンスどおりに妻へ伝えてもらえるように気をつけることが大切です。同席し直接伝えてもいいです。
  • 慰謝料なし……不動産を譲ることをほのめかしても妻が離婚に応じない場合には、一度だけ慰謝料の額を提示してみてもいいです。提示する金額は、預金残高と不動産評価額を参考に弁護士などに相談して目安となる金額を事前に決めておきましょう。
  • 子どもの親権者は母親……現在の調停では母親の親権が有利となっているため、この点について交渉を行っても徒労に終わる確率が高いため、「親権者は母親」との条件提示のままにします。ただし、妻が極端に高額な養育費請求を行ってきた場合には、「養育費を支払うことができないから、親権者となって子どもを育てていきたい」と主張することも考えます。
  • 一人娘の養育費は月額4万円……⑤の「養育費の要求が高額ならば自分で育てたい」と主張することによって、高額すぎる養育費をセーブすることができます。ただし、最終的には夫の収入に見合った範囲で金額を上げることも考えます。
  • 娘の学費は協議で決める……離婚成立後、娘の成長にあわせて必要になる学費の分担については、そのつど父親と母親が協議して決めることを約束します。
  • 離婚成立まで婚費月額18万円……あまり積極的に別居や婚費提示を行わないほうがいいでしょう。別居することによって離婚成立までの時間が長くかかる場合もあるからです。しかし逆に、夫自身が家を出て別居することによって、夫婦関係の修復が困難であることを妻や調停委員などの第三者に対して行動で伝えることができる場合もあるので、様子を見て慎重な言動を心がけましょう。
  • 別居の場合は妻子が実家へ戻る……別居と同様に、夫からあまり具体的な提示は行わないほうがいいでしょう。夫の希望は「離婚成立」であり「別居」ではないことを忘れないようにしましょう。妻側が強く別居を主張してきた場合は、子どもを転校させることの不安を説きます。 

意志が固いことを伝え、相手に「交渉してよかった」と思わせる

 日本の離婚では、夫からの離婚申し出は、経済的弱者を放り出すという格好になるためか、妻からの離婚申し出よりも困難という面もあります。したがってはじめから良い条件を出しすぎないように気をつけましょう。

ようするに、妻が「離婚交渉を行ったことで得をした」と受け取ることができる調停の運びとなることが大切です。そのためには、夫自身が妻に直接良い条件を提示するのではなく、調停委員に花を持たせる気持ちも必要です。

調停委員から妻へ「夫がもう少し良い条件を出すように説得してみましょう」との発言があれば、妻は調停委員への信頼感を持ち信頼します。信頼を得た調停委員が、調停回数を重ねるうち、妻に対して「夫の離婚意志は固い。今のうちに離婚を決めたほうが経済的に有利だ」とのニュアンスで離婚条件を伝える方向に進むことができれば、妻は、「調停委員の援助によって夫に譲歩させて良い条件を勝ち取った」と満足を感じられます。

この方法によって調停委員は、夫にも妻にもいくらか「味方」したかたちを取ることができるので、双方がある程度の満足を得て調停成立に向かうことができるのです。

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離婚を望む場合の交渉術(妻からの離婚)https://shiki-office.com/archives/11766Mon, 10 May 2021 19:52:36 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11766離婚を成立させるための交渉術

妻が離婚を希望する場合

 一度、夫の「不快感情」を引き出し、交渉をはじめる

 調停実務の現状として妻から申し立てた離婚調停は、夫からの離婚調停より成立しやすい面があることは否定できません。妻から離婚を申し出る場合の条件を、項目別に検証してみましょう。

 よくない離婚条件提示 調停が成立しやすい提示
①離婚する①離婚する
②預貯金をすべて妻の名義に変更②預貯金をすべて妻の名義に変更
③自宅は夫がそのまま居住(ローン完済)③自宅を売却し折半
④慰謝料なし④慰謝料300万円
⑤子どもの親権者は母親⑤子どもの親権者は母親
⑥養育費なし⑥一人娘の養育費は月額12万円
⑦娘の学費・面接なし⑦娘の学費・面接は協議で決める
⑧離婚成立まで婚費なし⑧離婚成立まで婚費月額30万円
⑨別居なし⑨別居の場合は妻子が実家へ戻る

左の要求では、夫が離婚しなければならない理由はありません。慰謝料も養育費もいらない、ただ別れたいという妻の気持ちに対して、夫は、「それほど別れたいなら子どもを連れて出て行け。望みどおり婚費なんか払ってやらないし、逆に慰謝料を請求してやる」と言い出しかねません。仮に、妻が夫の経済状態に遠慮して慰謝料や養育費を断った左の条件提示であったとしても、逆に夫として父親のプライドを傷つけ、かたくなに離婚をしないと意地をはらせる結果ともなりかねません。

では、右ではどうでしょう。初回調停で、妻から右の内容の要求を受けた夫は、甲考えます。「妻の言いなりになってたまるもんか。離婚なんかしない。預貯金を全部取られるのは悔しいし、自宅を売却するのも寂しい。慰謝料なんか払う理由がない。親権者は母親となるのは仕方ないかもしれないが、養育費12万円は高額すぎる。別居して妻子が実家へ戻った後に自宅でひとり暮らすのはわびしいうえに、毎月30万円も取られるのは不愉快だ」

夫の、この不快感情を引き出した後に、調停の回数を重ねながら、①~⑨の項目について少しずつ妻が譲歩をはじめます。また、調停委員から、「奥さんの言い分は一方的すぎますね、もう少しなんとかならないか説得してみましょう」と伝えてもらってもいいでしょう。

妻が譲歩しながら行う交渉のステップ

 離婚する……これは、終始一貫変わらない条件として、毎回調停入室時に、調停委員へ向け繰り返し伝えます。

  • 預貯金をすべて妻の名義に変更……この条件も調停3回目までは絶対に譲歩しない覚悟で申し出ます。最終的に離婚成立となるときには折半で折り合ってもいいですが、離婚後の生活準備金としてもできるかぎり多く確保するように心がけます。
  • 自宅を売却し折半……自宅へ残りたいと主張する妻も多いですが、家族で暮らす計画で作られた自宅は、母子家庭にとっては広すぎる場合もあります。家が広いと光熱費も余計に必要になるため、効率を考えて新たな住居に引っ越す選択肢もあります。新たな住居を購入する場合は、男性より低額のローンしか組むことができないことが多いため、やはり現金が一番心強い味方です。売却については、不動産業者に見積もりを依頼し、目処をつけておきましょう。夫が売却を拒否する場合は、見積もりにしたがって相応額の現金を分割で支払うように請求します。しかし、妻に十分な収入がある場合には、自宅売却ではなく妻が夫に対して相応額を支払うことにより名義変更を行ってもいいです。
  • 夫から慰謝料300万円……妻から離婚を申し出る場合も、一度だけは慰謝料額を提示してもてもいいです。しかしこれはハッタリに近い提案です。調停委員あるいは夫から色よい返事がえられないようであれば、即座に引き下げる要求です。
  • 子どもの親権者は母親……現在、調停では母親が親権に有利となっているため、譲歩する必要はありません。現在無職で収入がなくても親権は有利にはたらくことが多いでしょう。ただし、労働意欲があることはアピールしておきましょう。
  • 一人娘の養育費は月額12万円……要求額は回を重ねる中で算定表を目安に引き下げます。養育費については、離婚成立後でも子どもの養育が必要なかぎり、あらためて金額変更の請求を行うこともできます。調停調書に記することが重要です。
  • 娘の学費・面接は協議で決める……離婚成立後、娘の成長にあわせて必要となる学費については、そのつど父親と母親が協議して決めることを約束します。別居している場合は、離婚成立まで子どもへの面接を断ってもいいです。ただし、母親の都合ではなく、あくまで子どもの精神的混乱を避けるという理由からの面接延期です。
  • 離婚成立まで婚費月額30万円……あまり積極的に別居の提案を行う必要はないですが、夫がかたくなに離婚を拒み続ける場合は、十分な婚費を定めて別居し、妻の仕事や子どもの環境安定を優先させることも考えます。夫婦関係が破綻しているにも関わらず、意地で離婚しない夫には高めの婚費を要求します。妻子が自宅へも戻らずお金だけが出ていくことの無意味さを夫が感じたとき、離婚に応じることが多いのです。
  • 別居の場合は妻子が実家へ戻る……子どもの転校が不安に感じられるのであれば、実家ではなく自宅近くの賃貸物件へ引っ越してもいいです。夫婦をやり直す意志がないことを明確に伝えたい場合、別居は有効な方法です。

妻からの離婚申し出は有利。余裕をもった交渉を

 日本では、妻からの離婚申し出は、夫からの離婚申し出よりも受け入れられやすいため、それほど多くの譲歩は必要としません。妻に恋人がいるのでないならば、離婚の時期を焦るにではなく、新しい生活の準備期間として落ち着いて取り組むことです。

夫が「離婚交渉を行ったことで得をした」と感じられるような調停の運びとなることが大切です。そのためには、妻自身が夫に直接よい条件を提示するのではなく、調停委員を介して交渉を進める「仕掛け」にして、調停委員に花を持たせる気持ちも必要です。

調停委員から夫へ「奥さんはわがままですね、もう少し譲歩するよう説得してみましょう」との発言があれば、夫は調停委員を信用します。その調停委員が、回数を重ねるうちに夫に対して「妻の離婚意志は固い。今のうちに離婚を決めたほうが子どもとの関係をよく保つことができる」というようなニュアンスで離婚条件を提示してくれれば、夫は、「妻は失うが、子どもの父親であることには変わりない」と満足を感じることができます。一方で調停委員は、妻にも夫にも味方したかたちを取れるので、三者がある程度の満足を得て調停成立に向かうことができます。

 

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本当に離婚の判断は正しいのか?https://shiki-office.com/archives/11761Mon, 10 May 2021 19:39:11 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11761本当に離婚の判断は正しいのか?

離婚は、第3の人生への分岐点ですから、感情に走らず、冷静に判断する必要があります。

考慮すべき事項
・子どもの有無・年齢。
・離婚原因となる性格の不一致、異性関係、家族・親族との不仲問題などに解決の道はないのか。
・離婚後、収入(仕事)、住居などの生活設計の見通しはあるのか。等です。
慎重に、何度も何度も繰り返し検討します。

未成年の子がいる場合
「離婚してはいけない」
「親の勝手で子どもを片親にしてはいけない」
「それでも離婚したいなら、子どもが成人するまでは、仮面夫婦でも我慢する」

理由は…
子どもを引き取った妻側が経済的に困窮し、親の勝手で子どもを不幸にするケースが多いからです。
また、幼稚園では父の日・母の日に父母の似顔絵を描かせたり、遠足、運動会、発表会などの行事が目白押しで、その度に子どもに片親の寂しさを感じさせることになります。

また、感情的になって離婚を声高に主張する人に限って、離婚が最優先で、離婚後の経済的自立等の生活設計の準備が出来ておらず、自治体の援助内容についても知らない人も多い。
「そんな危なっかしい人が、子どもを抱えて、一人で生活できるのか」と周囲も心配して反対する訳です。

未成年の子がいても、離婚が止むを得ない場合もある
「家の中で二人は一言も口をきかない。子どもが親の顔色ばかりうかがうようになってしまった」
「親の夫婦喧嘩を見ていた幼児が自虐症になってしまった」
「二人の関係は修復不可能で、どうにもならない」
「別居した相手が離婚も成立していないのに、同棲して再婚の準備を進めている」
「夫は働かず、収入も家に入れないので、私がパートで支えている。夫婦喧嘩が絶えず、暴力を振るう。こんな夫だったら子どもの教育に悪いので要らない」
等の深刻な状況であれば、「最後まで離婚しないで我慢しなさい」とは言い切れません。

であれば、離婚について勉強し、子どもを不幸にしない形での離婚をするべきです。

周到に準備した上で離婚を言い出した人は、金銭的裏づけがあるだけに、子どもが不幸になる確率も低く、周囲の人も反対する人は少ないと思います。

離婚のメリット・デメリット

離婚のメリット
離婚の最大のメリットは、精神的関係の中の「不和・暴力・争いからの解放」「自由
の獲得」「再出発の希望」です。
熟年離婚の場合は、長年にわたり、耐えてきた嫌な相手から解放されること自体が大変なメリットになるでしょう。
財産的には、住宅や預金のゲット、身分的には子の親権の獲得などがあります。これらが獲得できれば、まさに離婚にはメリットがあります。

離婚のデメリット
最大のデメリットは、家庭の崩壊です。子の親権を獲得したとしても、子供から見れば、両親に囲まれた子よりハンディを負うことは一目瞭然です。また、財産を得たとしても、財産を分割するわけですから、それ自体デメリットです。もし、財産を得られないならば、生活の不安が生じ、大変なデメリットになります。

離婚手続き中のデメリット
生活の不安が最大のデメリットです。この解消方法は「婚姻費用の分担」という法
的手続になります。精神的にも、離婚紛争から生ずるストレス、孤独感・不安感の増幅は、多くの離婚経験者の語るところです。

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養育費https://shiki-office.com/archives/11758Mon, 10 May 2021 19:34:41 +0000https://reiwa-gyosei.com/?p=11758養 育 費

養育費とは、「子どもを育てるのに必要な費用」です。一般的には、未成熟子が自立するまでに必要な費用だとされ、衣食住に必要な経費・教育費・医療費・最低限度の文化費・娯楽費・交通費など、たくさんの内容が含まれます。  

子どもの権利・親の義務

 養育費の支払いは親としての義務ですから、離婚の形態に関わらず、養育費については必ず取り決められるべきものです。養育費は父母の経済力に応じて分担しなければなりません。親権がどちらにあっても関係ありません。一緒に生活していないほうの親も、当然支払います。

妻が離婚したい一心で「離婚さえしてくれれば、今後一切、養育費の請求はしません」と、夫に約束してしまうことがあります。けれども、子どもが親から扶養を受ける権利は放棄できないとされています。父母の約束は2人の間では効力があるものの、子どもは父母間の約束に縛られるわけではないのです。 

2人で話し合って決める

養育費については、支払いの期間・支払い金額・支払い方法について具体的に取り決めましょう。金額は、現在子どもを育てるのにかかっている費用、今後成長に伴ってかかるであろう費用、それぞれの財産、今後の経済状態などを検討して決めます。

※ (協議離婚であれば、取り決めた内容を「離婚協議書」などの合意文書として書面で残し、合意内容を強制執行認諾約款付きの「公正証書」にしておきましょう。)

決まらない場合は裁判所で

 話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所の調停を利用できます。離婚前であれば、離婚調停や婚姻費用分担を求める調停の中で話し合います。離婚後であれば、「養育費請求」の調停で話し合います。調停で合意できず不成立となった場合には、家庭裁判所が審判によって決定します。裁判離婚の場合は、離婚と同時に養育費も請求すれば、判決で決定されます。  

養育費請求の申し立て 

申立先 家庭裁判所(相手方の住所地、または相手方と合意した所)
費用 対象の子ども1人につき1200円(収入印紙) + 郵便切手(80円×10枚)
必要な物▪「家事調停申立書(養育費)(所定の用紙)

▪自分、相手、子どもの戸籍謄本 各1通

※切手の額や必要な物は、裁判所によって異なる場合があるので、問い合わせてください。

 金額の相場・・・ それぞれの親の資力、生活水準によって決まってくるものなので、一般論では言えません。養育費早見表参考にするといいでしょう。

 養育費早見表

養育費を支払う親の年収」を縦軸、「子どもを育てる親の年収」を横軸としたマトリクス表。年収と子の人数によって標準額がかわるようになっている。東京と大阪の裁判官らをメンバーとする「東京・大阪養育費等研究会」が2003年4月に発表した(判例タイムズ1111号「簡易迅速な養育費等の算定を目指して──養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」巻末綴じ込み小冊子)

支払い方

 支払う期間は、養育費の申し立てがあった時から、子どもが社会人として自立するまでが一般的とされています。これは必ずしも未成年の間を意味するものんではなく、「高校卒業まで」「18歳になるまで」「成年に達するまで」「大学卒業まで」など、親の財力や学歴などの家庭環境によって判断されます。

 支払い方法は、金融機関の子ども名義の口座に毎月振り込んでもらうのがお勧めです。ただし、支払う側が特に希望した場合や、支払ってもらう側が相手の支払い能力や約束の履行意思を危惧する場合には、額が低くても一時金で受け取るほうが無難なこともあります。

 養育費を一方の親だけが負担していた期間があれば、もう一方の親に請求することができます。長期の別居の後で離婚する場合、離婚後の養育費だけでなくて、別居期間中の養育費も請求できます。もし離婚の際に養育費の請求をしないと約束した場合には、過去の養育費の分担を請求することは難しくなります。なお、支払い期間内においては、養育費の免除ないし減額・増額を双方が求めることができます。

  

Q  養育費に税金はかかる?

 A  養育費として取得したお金については、教育に通常認められる範囲については非課税とされています。

  • 養育費が毎月親の口座に振り込まれる場合は「収入」とみなされ、公的援助が制限されることがあります。

養育費の変更

 養育状況の変更や、収入の変化に合わせて、養育費の免除または減額・増額を求めることができます。話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に養育費増額請求の調停、養育費減額請求の調停の申し立てをします。増額・減額を申し立てる際には、正当な理由が求められます。  

養育費の増減で考慮される事情

 増額の事情

  • 子どもの入学、進学に伴う費用
  • 子どもの病気、ケガによる治療費
  • 受け取る側の親の病気、ケガ
  • 受け取る側の親の転職や失業による収入の低下
  • 物価水準の大幅な上昇

 減額の事情

  • 支払う側の病気
  • 支払う側の転職、失業による収入の低下
  • 受け取る側の親の収入増
  • 養育費の請求をしないと約束した場合
  • 子どもの成長に伴って、事情も当然変わります。

    後で養育費の金額変更で揉めないためには、予め離婚協議書に「子どもの進学、病気などの際には養育費の増額請求ができる」などの項目を盛り込んでおくほうがいいでしょう。ただし、契約書に上記項目を記入しても強制力はありません。あくまで確認事項にとどまり、養育費の増減については夫婦で協議する必要があります。

    再婚と養育費

     元夫が養育費を支払っていて、子どもを引き取った元妻が再婚したとします。元の妻が再婚しただけでは、養育費の支払いを中止する理由にはなりません。子どもの生活保持義務を負うのは再婚相手ではありません。しかし、子どもと再婚相手が養子縁組をする場合には、養親にも法的に子どもの生活費を負担する義務が生じるので、養育費の減額が認められる場合があります。 

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