患者の責任性を目覚めさせる法

患者の責任性を目覚めさせる法

ここでは患者の多種多様な反論に対する技術、責任存在となることが重荷であると勘違いしている人の反抗、自由から逃避しようという態度を改めさせるための説得術を紹介する。特にここで必要なのは、責任性は人間存在の基本的特徴であることを明らかにすることで、できるだけ日常的な言葉で具体的に話して、一般人に深く理解できるようにする。適切な比喩を用いることも場合によっては躊躇してはならない。

伝えるべきこと

平凡な日常生活を送るごくふつうの人間にその人の責任性を完全に意識させるために、私たちは彼に対し、あなたは個人的な苦悩を抱えているばかりでなく、その苦悩に打ち勝つ数多くの可能性も持っている個人なのだと教えてあげることができる。ここにいるA氏は宇宙全体の営みの中でたった一度しか存在しない。彼又は彼女がどのように人生を終えるか、何を行い、何を怠ったか、そうしたことはすべて再び繰り返すことはなくそこで終わる。彼らとその運命はその都度その都度一回きりで、誰も彼らからそれを奪うことはできない。達成されるべき課題は一回きりの課題でその人だけに与えられたものだ。各個人固有の課題だと認識すると、その課題に対する責任性が自然とわいてくる。それはときには使命感となる。困難と戦い、あるときは不可避な運命に耐える人間を強くしてくれるのは、たった一度きりの課題を抱え、それを実現できるのは自分だけでほかに代わりはいないのだという気持ちなのである。

その他の法

あるいは患者に対して、自分の人生は小説であり、自分自身が主人公だと想像させることもできる。ただし小説中の出来事のつづきを進めていき、その次の章に何が起こるかをそのたびに決める役割は、完全に患者の手にゆだねることとする。その場合にも彼は、責任の重荷を感じて尻込みし逃げ出すのではなく、無数の行動の可能性を前にして自由に決断するという、実存における本質的な責任性を想像するだろう。最終的にその患者に、人生の最期を迎え、自伝を書こうとしている自分を想像させたなら、私たちは彼自身の能動性にいっそう働きかけられるだろう。P.90